ナバホ語

ナバホ語：アメリカ先住民の言語

ナバホ語（Diné bizaad）は、アメリカ合衆国南西部に居住するナバホ族の言語であり、アサバスカ諸語に分類されます。この言語は、カナダ北西部やアラスカに多く見られるアサバスカ諸語の中で、地理的にも言語学的にも南部アサバスカ諸語に属するという特徴を持っています。

話者数と現状

ナバホ語は10万人以上の母語話者を抱え、その数は増加傾向にあります。これは、米墨国境以北のアメリカ先住民およびカナダのファースト・ネーションの言語の中で最も多い話者数を誇ります。ナバホ語は、現在でもあらゆる世代のナバホ族の間で日常的に使用されており、多くの親が子供たちに母語として教えています。ナバホ族は、部族語を日常的に使用する数少ないアメリカ先住民の一つです。

しかし、保留地外の都市部では、若者が英語教育を受けることが多く、ナバホ語が消滅の危機に瀕しているのも事実です。また、保留地内でも英語のみを使用する若者が増えており、言語の継承が課題となっています。

音韻

ナバホ語の音韻体系は、子音と母音、そして声調によって構成されます。

子音：詳細については専門的な資料を参照ください。
母音：
声調：短母音には高（á）と低（a）の2種類、長母音には高（áá）、低（aa）、昇（aá）、降（áa）の4種類が存在します。

文法

ナバホ語は、形態的類型論に基づいて分類することが難しい言語です。多くの接辞、特に接頭辞を持つため膠着語のようでもありますが、それらが予測不可能な点では屈折語的でもあります。動詞は名詞よりも多くの形態素を持ち、平均して名詞が4〜5個の形態素を持つ一方、動詞は11個の形態素を持つことがあります。名詞の形態素は動詞の形態素よりも理解が難しい傾向があります。

ナバホ語は一般的に膠着語または屈折語とされますが、抱合語として分類されることもあります。

語順に関しては、ナバホ語は一般的にSOV型（主語-目的語-動詞）に分類されます。しかし、一部の話者は名詞を人間、動物、非活動体の3つのランクに分類し、それによって主語と目的語の順序を決定します。ランクの高いものが文頭に来るため、統語論が曖昧になる場合があります。言語学者のEloise Jelinekは、ナバホ語を統語論的な規則ではなく、文脈によって意味を判断する自由語順の言語として分類しています。

動詞

ナバホ語において、動詞は文中で非常に重要な役割を果たし、多くの情報を含みます。動詞は語根から作られ、法や相を規定する語幹を基盤とします。語幹は、幾分見えにくい接頭辞によって示され、後置的目的語、後置詞、副詞、反復、数、直接目的語、直示情報、法、相、主語、分類、感嘆、証拠性などの情報を表します。これらの接頭辞は、時にはゼロになることもあります。

第二次世界大戦での活躍

第二次世界大戦中、アメリカ軍はナバホ語話者をコードトーカーとして採用しました。彼らは、敵に解読されない暗号をやり取りすることで、戦争の勝利に大きく貢献しました。この歴史的な事実は、ナバホ語の重要性とユニークさを物語るものです。

関連情報

アサバスカ諸語
北部アサバスカ諸語
太平洋岸アサバスカ諸語
南部アサバスカ諸語
核廃棄物隔離試験施設：ナバホ・ネイションのあるニューメキシコ州にあるため、警告文にナバホ語も加えられています。

まとめ

ナバホ語は、その独特な構造と文化的な重要性から、言語学的に貴重な研究対象であり、アメリカ先住民の歴史と文化を理解する上で欠かせない要素です。しかし、若年層を中心に話者数が減少している現状を鑑みると、言語の維持と継承のための努力が不可欠であると言えるでしょう。

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