桂島宣弘

桂島宣弘：近世思想と東アジアを繋ぐ歴史学者

桂島宣弘氏は、1953年生まれの日本を代表する歴史学者の一人です。専門は日本近世思想史と民衆思想史であり、その深い知見と幅広い研究活動から、国内外で高い評価を得ています。

氏は岩手県に生まれ、東北大学工学部を卒業後、立命館大学へと進学。同大学大学院文学研究科博士後期課程において研鑽を積み、1994年には「幕末民衆思想の研究」で博士（文学）の学位を取得しました。その後、姫路日ノ本短期大学での教員経験を経て、1995年から立命館大学文学部助教授、1997年からは教授として、後進の育成と研究活動に尽力しました。2019年には立命館大学を退官、名誉教授となりました。

桂島氏の研究は、日本近世思想、とりわけ幕末期における民衆の思想や宗教を深く掘り下げています。子安宣邦氏の方法論に影響を受けた氏は、「前近代」である江戸時代の思想を基盤に、「近代」への逆照射を試みる独自の研究スタイルを確立しました。特に、幕末期における国学や民衆宗教の動向を分析することで、当時の社会構造や人々の意識を鮮やかに描き出しています。

氏の研究は日本国内にとどまらず、東アジアへと視野を広げています。韓国の東西大学校や高麗大学校において客員教授を務めた経験は、氏の国際的な研究活動と、東アジアを舞台とした歴史認識の深化に大きく貢献しました。近年は、東アジア史学思想史研究に注力し、日本と周辺諸国の歴史的・思想的な交流や相互作用を多角的に考察しています。

学術活動に加え、桂島氏は社会問題にも積極的に関与しています。例えば、日本による対韓輸出優遇撤廃に反対する声明に名を連ねるなど、歴史学者の視点から、現代社会の課題にも発言を続けています。

これらの多様な活動は、氏の著書や共編著にも反映されています。『幕末民衆思想の研究―幕末国学と民衆宗教』、『思想史の十九世紀―「他者」としての徳川日本』、『自他認識の思想史 日本ナショナリズムの生成と東アジア』など、数々の著作は、日本近世思想史研究における重要な貢献であり、高い評価を得ています。また、『日本事情入門』のような、海外向けの解説書も執筆しており、日本の歴史や文化を世界に発信する役割も担っています。

桂島宣弘氏の研究は、単なる歴史の記述にとどまりません。過去を深く理解することで、現代社会の課題を解き明かし、未来への展望を示すための重要な知見を提供し続けています。その研究活動は、今後とも日本、ひいては東アジアの歴史研究に大きく貢献していくことでしょう。

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