桂歌之助 (3代目)

三代目 桂歌之助：建築から落語へ、そしてカレー店経営へ至る波瀾万丈な人生

三代目桂歌之助は、1971年大阪府高槻市生まれの落語家です。本名は横田純一郎。米朝事務所に所属し、上方落語協会会員として活躍しています。彼の出囃子は「雛鶴三番叟」です。

千葉大学から落語の世界へ

意外なことに、歌之助は千葉大学工学部建築学科卒業という経歴を持っています。大学卒業後、落語家になるという夢を抱き、当初は桂雀々師匠に入門を志望しました。しかし、タイプが合わないと判断され、1997年、2代目桂歌之助師匠に入門することになります。師匠である2代目歌之助も建築系の進学に失敗し、落語の道を選んだという共通点がありました。入門のいきさつも独特で、見習いとして師匠の自宅に通っていた際に、師匠が急性膵炎で入院。正式な入門は病院で行われたというエピソードがあります。

芸名と初舞台

入門当初は「桂歌々志」という芸名で活動していました。「歌々志」という名は、師匠の「歌」、桂雀々の「々」、そして大師匠である3代目桂米朝が考案した「志」を組み合わせたものです。「子」だと弱々しい印象を与えるため「志」が選ばれたという逸話が残っています。1997年5月、「歌之助百噺」にて初舞台を踏みます。26歳という年齢での入門だったため、3代目桂米朝から「高座でやるかどうかは別として、一つでも噺を仰山覚えときなさい」とアドバイスされたそうです。2代目歌之助は2002年に亡くなり、歌之助は唯一の弟子として師匠の芸を受け継ぐことになります。2代目歌之助は子を持たなかったため、歌之助を非常に可愛がっていたと言われています。

三代目襲名と20周年記念落語会

2005年8月1日、トリイ寄席「米朝と孫弟子の会」の座談会で、大師匠である米朝から三代目桂歌之助を襲名するよう指名を受けました。2007年1月5日にはワッハホールで襲名披露公演を行い、同月22日からは天満天神繁昌亭で襲名披露公演を開催。繁昌亭オープン以来初の襲名披露公演となりました。襲名披露公演当日には、米朝の口上が予定されていましたが、事務所スタッフのミスで米朝に連絡が行き届かず、遅刻するというハプニングもありました。桂まん我が桂団朝を車で迎えに行き、無事に公演は続けられました。2017年には芸歴20周年を記念して、20日間に渡る連続落語会『歌之助やけくそ二十日間』を開催し、40本のネタを日替わりで披露しました。

スパイスカレー店「ルーとこめ」の開業

仕事で訪れるうちに魅力を感じた兵庫県丹波篠山市に、2021年9月25日、古民家を改装したスパイスカレー店「ルーとこめ」をオープンさせました。落語家としての活動と両立させながら、不定期営業で店を運営しています。

芸風と人物像

2代目歌之助が得意とした「善光寺骨寄せ」を、2007年10月24日の繁昌亭での独演会で初めて演じました。また、外国語落語にも造詣が深く、「動物園」をイタリア語（2008年イタリア公演）、中国語（2017年台湾公演）で演じた経験があります。

歌之助の父親は医師で、入門時に師匠の入院先へ同行した際、点滴の袋を見て「ははぁ、ここが悪いんですね」と話したというエピソードがあります。双子である弟がいることも知られていますが、一般人であるため、情報は公開されていません。趣味は歩くことで、雑誌『WALK ウォーク関西版』2005/06年秋冬号に掲載された「平成の伊勢参り」では、大阪市東成区玉造から伊勢神宮まで約170kmを7日間かけて歩いた経験を紹介しています。

受賞歴

歌之助は数々の賞を受賞しており、その中には2003年の「NHK新人演芸大賞」入賞、2006年の「なにわ芸術祭」新人賞、2007年の「繁昌亭大賞 輝き賞」「咲くやこの花賞」大衆芸能部門、「文化庁芸術祭」新人賞などがあります。

まとめ

三代目桂歌之助は、建築という異色の経歴を持ちながら、落語家として、そしてカレー店経営者として多方面で活躍する、魅力的な人物です。落語への情熱と、新しいことに挑戦する姿勢は、多くの人の心を捉え続けています。これからも彼の活躍から目が離せません。

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