桃井斉

桃井齊：日本の鉱物学を牽引した研究者

桃井齊(1930年1月20日 - 2002年2月26日)は、日本の地球科学に多大な貢献をした鉱物学者・鉱床学者です。東京都で生まれ、旧制第五高等学校を経て、1953年に九州大学理学部地質学科を卒業しました。

九州大学での研究生活と助教授への昇進

九州大学では、学部から大学院にかけて冨田教授らのもとで、花崗岩や黒色頁岩中のラジウム含有量に関する研究に携わりました。その後、1956年に九州大学理学部助手となり、吉村豊文教授の指導の下、マンガン珪酸塩鉱物(イネス石、ダンネモル石、パイロクスマンガン石、バナジウム柘榴石、ばら輝石など)の鉱物化学的研究に没頭しました。この研究は、後の彼の研究人生の礎となる重要な経験となりました。

地道な研究活動が実を結び、1968年には助教授に昇進。さらに1962年には、九州大学より理学博士の学位を取得するなど、研究者として着実にキャリアを積んでいきました。

愛媛大学教授としての活躍と層状マンガン鉱床研究

1976年、桃井氏は愛媛大学理学部教授に転任しました。同大学では、1987年から1995年まで評議員を務めるなど、教育・研究機関の運営にも貢献しました。

愛媛大学での研究活動においては、1970年代からマンガン珪酸塩鉱物の熱水合成実験に着手し、ブラウン鉱やマンガン団塊の生成条件に関する重要な成果を挙げました。並行して、鹿児島県と宮崎県内の層状マンガン鉱床の調査研究にも取り組み、地質学的な視点からの研究へと発展させていきました。

桃井柘榴石：その功績を称えて

桃井氏の鉱物学への貢献は、2010年に愛媛県鞍瀬鉱山で発見された新鉱物にその名を冠することで称えられました。この新鉱物、バナジウムを含むマンガン柘榴石は「桃井柘榴石(Momoiite)」と命名され、彼の研究者としての業績と、鉱物学への貢献の大きさを示すものとなっています。

教育者としての顔と晩年

1995年に愛媛大学を定年退官した後も、桃井氏は自身の経験や研究成果を後世に伝えることに尽力しました。1995年には『晴れのち曇り』を出版。これは、自身の研究生活や人生経験を振り返る貴重な記録となっています。

また、愛媛県地質図（20万分の1）および同説明書を鹿島愛彦氏、高橋治郎氏と共に共著するなど、教育者として、後進の育成にも力を注ぎました。

桃井齊氏は、鉱物学、特にマンガン鉱物に関する研究で顕著な業績を残し、日本の地球科学の発展に大きく貢献しました。桃井柘榴石という名を残し、その功績は長く人々の記憶に刻まれ続けることでしょう。

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