桃川如燕

桃川如燕：講談界に名を刻んだ名跡の系譜

桃川如燕は、講談界において歴史と重みを持つ名跡です。現在、空き名跡となっており、六代目神田伯山が預かっている状態です。本稿では、初代から三代目までの桃川如燕について、その生涯や業績を詳しく見ていきます。

初代 桃川如燕：酒と女と講談

初代桃川如燕（1832年6月～1898年2月28日、本名：杉浦要助）は、江戸・根津宮永町の酒屋の息子として生まれました。幼少期は上野寒松院で小姓見習いを経験しています。伊東燕国に入門し、国栄を名乗って講談の道を歩み始め、夜席真打を経て、二代目燕国を襲名。その後、燕玉、燕林と名乗りを改め、最終的に「如燕」を名乗ることとなります。

「如燕」という名前に関しては、酒と女をこよなく愛した初代の性格を表す逸話があります。酒を飲む口に女が寄り添う様子を表現した字が「如」であるという説が伝えられています。

初代如燕は、その美声から「鶯小僧」「松虫燕国」と称賛され、鍋島猫騒動を題材とした「百猫伝」を得意としたことから「猫燕国」という異名も持っていました。その卓越した講談の腕前は、『中央新聞』などにも多く記録が残されています。1875年には軍談師頭取に就任し、1888年には明治天皇の前で口演を行うなど、その名声は広く知れ渡っていました。

二代目 桃川如燕：落語から講談へ、そして組合の重鎮に

二代目桃川如燕は、落語家一家に生まれた人物です。13歳で落語家としてデビューしますが、兄弟との待遇の違いに悩み、18歳で講談に転向。三代目一龍斎貞山の門下で修業を積み、一龍斎貞宗、一龍斎一仙と名乗った後、独立して二代目千代田錦鏡となります。その後、初代桃川如燕の門下に入り、桃川若燕を経て、二代目桃川如燕を襲名しました。

講談組合の分裂騒動では正義派の代表を務め、組合再集結後は副代表、頭取を歴任するなど、組合の運営にも大きく貢献しました。「義士伝」を得意とした一方、「日蓮記」「暁星五郎」「越後騒動」なども演じ、踊りや三味線にも堪能なマルチな才能を持つ人物でした。千代田錦鏡時代には、赤穂浪士を模した高張提灯を掲げたことから「櫛形如燕」と呼ばれたエピソードも残っています。温厚で品格のある人柄から、周囲の人々からの尊敬を集めました。

三代目 桃川如燕：五代目神田伯山への道

三代目桃川如燕（本名：岡田秀章、1898年4月生まれ）は、1949年に襲名しました。その後、彼は五代目神田伯山を襲名することとなります。

まとめ：伝統と継承、そして未来へ

初代から三代目までの桃川如燕は、それぞれ個性豊かな人物であり、講談界に大きな足跡を残しました。その名跡は現在、空き名跡となっていますが、その歴史と伝統は、今後の講談界の発展に繋がる重要な遺産と言えるでしょう。六代目神田伯山による名跡の預かりは、この伝統を受け継ぎ、未来へと繋げるための重要な役割を担っていると言えるのではないでしょうか。

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