案文

案文（あんもん）とは

案文は古文書学において重要な位置を占める用語です。これは正文の草案や控え、また写しとして作成された文書を指します。土代とも呼ばれることがありますが、一般的には草案・控え・写しの中で法的な効力を有するものに限定される場合もあります。

案文の役割とプロセス

文書を作成する際の一般的な流れには、まず案文や土代と呼ばれる草案の作成が含まれます。次に、これを元に清書を行い、相手方に渡す正文を作成します。このとき、元の案文や土代は控えとして保管しておくことが重要です。

案文は、正文の内容を他者に伝えたり、所領や職務を分割したりする際にも作られます。また、偶発的に文書が紛失した場合に備えて、案文は紛失状を作成するためにも用いられます。特に訴訟においては、通常正文が証拠として提出されますが、所有者が紛失を恐れる場合には、案文の裏に校正裏封案文を加え、適切な検証を経て正文の代替文書として使用することがありました。

この校正裏封案文は、正文と同様に扱われるほか、遠隔地への命令書としても利用されることがあり、案文の重要性を一層強調しています。

中世における案文の変遷

案文がこのようないくつかの機能を持つようになったのは、中世に入って以降のことです。律令制の下では、実際に命令として出された文書を「文」、役所に保存されるものを「案」として区別していました。しかし、9世紀後半には「案文」という言葉が現れ、中世に至って案文と正文の間に明確な区別が生まれるようになりました。このプロセスを通じて、人々は正文を相手方に渡し、案文は手元に保持することが一般化していったのです。

特殊な案文：口宣案

案文の中でも特に注目すべき存在が口宣案です。口宣案は、通常口頭で発せられる宣旨の内容を筆記したものであり、正本に相当する文書が作成されないために、案文が正文の代替として用いられたのです。これにより、案文は単なる草案ではなく、文化や歴史に根ざした重要な役割を持つ文書として位置づけられています。

参考文献

• - 赤松俊秀「案文」『国史大辞典 1』（吉川弘文館 1979年）ISBN 978-4-642-00501-2
• - 上島有「案文」『日本史大事典 1』（平凡社 1992年）ISBN 978-4-582-13101-7
• - 高橋正彦「案文」『日本歴史大事典 1』（小学館 2000年）ISBN 978-4-095-23001-6

このように、案文は古文書学における文書作成の重要な要素であり、歴史的背景を理解する上でも欠かせないポイントとなります。

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