桑名城

桑名城（くわなじょう）

桑名城は、三重県桑名市に位置する日本の城で、かつては伊勢桑名藩の藩庁として重要な役割を果たしました。揖斐川に面した水城であり、その立地から交通の要衝としても栄えました。城の北側には東海道の宿場町「桑名宿」があり、多くの旅人が行き交いました。

概要

桑名城は、市街地の東端、揖斐川沿いに築かれた水城です。かつては、歌川広重の浮世絵「東海道五十三次」にも描かれるほど、美しい姿を誇っていました。現在、城跡には建造物は残っていませんが、石垣や堀が往時を偲ばせます。現在は九華公園として整備され、市民の憩いの場となっています。

2003年には、国土交通省の水門統合管理所が建設される際、かつての蟠龍櫓跡に外観復元された蟠龍櫓が建てられました。この櫓は二重構造で、1階は水門管理所として使用されていますが、2階は展望台と資料室として一般に開放されています。

歴史

戦国時代、この地には北勢四十八家と呼ばれる土豪が割拠しており、伊藤氏、樋口氏、矢部氏といった有力な豪族がそれぞれ城を構えていました。現在の桑名城は、伊藤氏の東城があった場所に築かれたと考えられています。1513年、伊藤武左衛門がこの地に城館を築いたのが桑名城の始まりとされています。

1574年、織田信長がこの地を征服し、家臣の滝川一益が三城を支配下に置きました。その後、豊臣秀吉の時代になると、支配者は目まぐるしく入れ替わり、様々な武将がこの地を治めました。

関ヶ原の戦いの後、徳川家康は本多忠勝を桑名10万石の領主として迎え入れました。忠勝は入封後すぐに城郭の建設に着手し、揖斐川沿いに壮大な城を築きました。城には4重6階の天守をはじめ、51基の櫓、46基の多聞が立ち並び、城下町も整備されました。築城には、徳川四天王の一人である井伊直政も協力したという逸話が残っています。

1701年、松平定重の時代に大火が発生し、桑名城の大部分が焼失しました。この時、天守も焼失し、その後再建されることはありませんでした。その後、松平氏は転封を繰り返し、最終的には久松松平氏が桑名藩主として入城しました。

幕末には、松平定敬が藩主を務めましたが、鳥羽・伏見の戦いで旧幕府軍が敗北した際、江戸へ向かい、藩主不在のまま桑名城は無血開城しました。開城の際、明治政府軍によって辰巳櫓が焼き払われました。

1928年には、本丸・二之丸跡地が九華公園として整備され、1942年には三重県の史跡に指定されました。

遺構

桑名城の遺構としては、了順寺の山門や浄泉坊の御殿が現存しています。また、一部の堀や石垣も残っており、往時の姿を偲ぶことができます。

特筆すべきは、四日市港の建設に際し、桑名城の石垣の一部が転用されたことです。この石垣は、外洋からの波を防ぐ防波堤として使用され、その構造から「潮吹き堤防」と呼ばれています。潮吹き堤防は、国の重要文化財に指定されています。

復元建造物・周辺施設

蟠龍櫓（ばんりゅうやぐら）: 2003年に外観復元された二層櫓で、国土交通省の水門統合管理所として利用されています。
本多忠勝像: 桑名城を築いた本多忠勝の像で、城跡内に設置されています。
鎮国守国神社: 藩祖である松平定綱と実父松平定信を祀る神社で、城内にあります。
照恩寺山門: 城門を移築したものと伝えられています。
七里の渡し: 東海道の道標と鳥居が建っており、かつての賑わいを伝えます。
六華苑: 実業家諸戸清六の邸宅で、国の重要文化財・名勝に指定されています。
立教小学校: 藩校「立教館」の流れをくむ小学校です。

交通

JR関西本線・近鉄名古屋線・養老鉄道養老線 桑名駅から徒歩約15分


桑名城は、その歴史と遺構を通じて、日本の城郭文化や歴史を深く理解する上で重要な場所です。九華公園として整備された現在も、その魅力は色褪せることなく、多くの人々を惹きつけています。

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