桑野光正

桑野 光正（くわの みつまさ）は、1954年（昭和29年）12月19日に生を受けた日本の経営者です。神奈川県鎌倉市大船で、地域に根差した町工場の家庭に生まれ育ちました。

幼少期から青年期にかけては、地元の教育機関で学びました。鎌倉市立御成小学校、鎌倉市立御成中学校を経て、湘南学園高等学校に進学。さらに高等教育を受けるため、専修大学経済学部経済学科に入学し、経済学を修め、1977年に大学を卒業しました。

社会人としての第一歩は、流通業界大手であるイトーヨーカ堂株式会社で踏み出しました。入社後、小売業の基礎と実務を経験。1985年には、イトーヨーカ堂グループの一員であった株式会社ダイクマへ活躍の場を移します。ダイクマはディスカウントストアを展開しており、異なる業態での経験を積むこととなりました。

キャリアの大きな転換期は、2004年に訪れます。株式会社ダイクマが株式会社ヤマダ電機によって買収されたことに伴い、桑野氏はヤマダ電機へ入社することになりました。ヤマダ電機では、入社当初から重要な役割を担います。特に、同社の人材育成機関である「礎生塾」の塾長に就任し、次世代を担う社員の教育・育成に尽力しました。

ヤマダ電機での役職は多岐にわたり、経営の中枢へと昇進を重ねていきます。2005年には執行役員として礎生塾塾長を兼任。翌2006年には取締役常務執行役員に就任し、総務本部副本部長を兼務するなど、経営執行に関わる責任ある立場を務めました。2008年には取締役兼執行役員専務へと昇格し、引き続き総務本部副本部長を担当。2010年には総務本部長となり、再び礎生塾塾長も兼務するなど、経営基盤の整備と人材強化の両面を統括しました。その後も総務本部長として組織運営に深く関与し、2012年には取締役兼執行役員専務、2013年には取締役兼執行役員常務としてその職を務めます。2014年には総務本部長に加え、企業の組織構造改革を推進する人事構成改革室長も兼任するなど、経営課題への対応を主導。2015年も取締役兼執行役員常務総務本部長として、経営の安定と発展に貢献しました。

そして2016年、桑野氏はヤマダ電機の歴史において画期的な出来事となる代表取締役社長兼代表執行役員COO（最高執行責任者）に就任しました。これは、ヤマダ電機の創業者である山田家以外の人物としては初の社長就任であり、経営体制の多様化を示すものでした。社長在任中は、ヤマダ電機の主力である家電量販事業の更なる強化と、これまでの経験で培った人材育成への知見を活かし、組織全体のレベルアップに力を注ぎました。社長職は2018年まで務め、経営トップとしてリーダーシップを発揮しました。

社長退任後も、桑野氏はヤマダ電機の経営に携わり続けました。2018年には取締役兼執行役員副会長に就任し、経営陣を支える立場となります。2020年からは、会長付特別顧問として、長年にわたる経営経験と業界知識に基づき、経営戦略に関する助言を行う役割を担っています。

また、企業経営の傍ら、桑野氏は社会的な活動にも貢献しています。山田昇記念財団では代表理事を務め、社会貢献活動を推進しました。さらに、国の重要な審議会委員としても活動。経済産業省の産業構造審議会における廃棄物・リサイクルに関するワーキンググループ委員として、電気・電子機器のリサイクル促進に関する議論に参加しました。加えて、資源エネルギー庁の総合資源エネルギー調査会では、小売事業者の省エネルギーに関する表示判断基準を定める小委員会の委員を務めるなど、エネルギー消費効率の向上に向けた政策策定にも寄与しました。

桑野光正氏は、イトーヨーカ堂、ダイクマ、そしてヤマダ電機という日本の流通・家電業界を牽引する企業で、要職を歴任し、特にヤマダ電機では創業家以外から初の社長に就任するなど、経営者として顕著な実績を築きました。総務、人事、人材育成から事業執行まで、幅広い分野でその手腕を発揮し、企業の成長と社会的な課題への貢献に尽力した人物として知られています。

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