桜の通り抜け (大阪造幣局)

桜の通り抜け：大阪の春の風物詩

大阪市北区にある独立行政法人造幣局では、毎年4月中旬の7日間、敷地内の一部を一般公開し、『桜の通り抜け』を開催しています。大川沿いに続く約560メートルの通路に、134品種、約338本もの桜が咲き誇る様子は、まさに圧巻です。多くの人がこの美しい桜並木を通り抜け、春の訪れを満喫します。

歴史と伝統

『桜の通り抜け』の歴史は、天保・弘化年代（1830年-1847年）にまで遡ります。当時、この地にあった伊勢国津藩主藤堂家大坂蔵屋敷の堤に植えられた桜が、その始まりです。屋敷では毎年花見が催され、多くの人々が桜を愛でました。

明治4年（1871年）、明治政府により蔵屋敷の一部は造幣局として整備され開業。蔵屋敷にあった桜は、大川の川岸通りに移植され、その後も新たな桜が植えられました。これらの桜が、現在の桜並木のルーツとなっています。

明治16年（1883年）、造幣局長遠藤謹助の発案により、一般にも公開されるようになりました。当初は限られた時間でしたが、次第に開放時間が拡大され、多くの人が訪れるようになりました。

明治26年（1893年）には7万人、明治32年（1899年）には9万6000人が訪れたという記録が残っています。ノーベル賞作家ラドヤード・キプリングも、1889年の日本旅行中に『桜の通り抜け』を体験し、その美しさに感嘆の声を上げています。

大正時代には工場の煤煙による影響で桜の生育が衰えましたが、全国から苗木を集めて補植が行われ、桜並木は復興しました。昭和初期には700本を超える桜が咲き誇るまでに至りました。

昭和20年（1945年）の空襲で多くの桜が焼失しましたが、戦後、北摂地域からの移植などにより、昭和22年（1947年）に『桜の通り抜け』は再開されました。昭和26年（1951年）には戦前の状態に復興し、夜間開放も開始されました。

1967年には事故が発生し、門や通路の拡張工事などが行われました。その後も、『桜の通り抜け』は盛況を続け、平成17年（2005年）には過去最高の114万7000人の観桜者数を記録しました。

2011年には東日本大震災の影響で夜桜ライトアップは中止されましたが、開催され、募金活動も行われました。2020年と2021年は新型コロナウイルス感染症の影響で中止となりましたが、2022年から一般公開が再開されました。近年は事前予約が必要となっています。

多様な桜の競演

『桜の通り抜け』で見られる桜は、カンザンやフゲンゾウなどの遅咲きの八重桜が中心で、その数は134品種にも及びます。毎年、『今年の花』として1品種が選定・発表され、多くの人々の注目を集めています。

アクセスと情報

『桜の通り抜け』は、毎年4月中旬の7日間、開催されます。具体的な日程や時間、アクセス方法などは、造幣局のウェブサイトなどで確認することができます。

まとめ

『桜の通り抜け』は、歴史と伝統を受け継ぐ、大阪を代表する春のイベントです。美しい桜並木と、そこに込められた人々の思いに触れることができる、貴重な機会です。ぜひ一度、訪れてみてください。

もう一度検索