桜川橋梁列車三重衝突事件

桜川橋梁上列車三重衝突事件：戦時下の悲劇とその後

1943年（昭和18年）10月26日、茨城県土浦市内の常磐線土浦駅構内では、未曾有の鉄道事故が発生しました。これは、貨物列車2本と旅客列車1本が絡む三重衝突事故であり、多くの犠牲者を出したことから、時として「土浦駅列車三重衝突事故」や「桜川橋梁上列車三重衝突事件」などとも呼ばれています。戦時中ということもあり、この事故に関する情報は断片的で、詳細な状況は謎に包まれています。

事故の経過

午後6時40分頃、貨物列車（貨物第294列車）は土浦駅に到着し、41両もの貨車を引上線へ移動させる入換作業中でした。この作業中に、信号係員のポイント転換ミスにより、貨物列車が誤って上り本線に進入。これが最初の事故です。

そのわずか数分後、午後6時51分30秒、場内信号機の進行指示に従って走行してきた別の貨物列車（貨物第254列車）が、誤進入していた貨物第294列車に衝突しました。衝突の衝撃は凄まじく、D51形蒸気機関車を含む先頭の貨車は大きく損傷し、後続の貨車14両も脱線転覆。下り本線までをふさいでしまいました。

さらに、午後6時54分、上野駅から平（現在のいわき市）へ向かう普通列車（普通第241列車）が下り本線に進入。しかし、前方の線路を塞いでいた貨物列車に衝突しました。この衝突により、普通列車の機関車は脱線転覆し、機関士は即死。客車は2両目までが脱線し、3両目は桜川橋梁上で脱線、4両目は橋梁から桜川に転落、水没するという惨状となりました。

救助活動と被害

事故発生後、市内各地から警防団や航空隊などが駆けつけ、夜を徹しての救助活動が展開されました。しかし、死傷者の数は膨大で、駅近くの病院はすぐに満杯となり、遺体は駅近くの空き地に安置されるという悲惨な状況となりました。事故発生から3日後、川に落ちた客車などがクレーンによって撤去され、常磐線は復旧しましたが、この事故による死傷者数は資料によって大きく異なっています。

『国有鉄道重大運転事故記録』では死者110名、負傷者107名とされていますが、『土浦市史』や『土浦駅史』では死者90名台、負傷者100名台と記載されています。この食い違いの原因は、戦時下の情報統制や記録の不備にあると考えられます。特に水没した客車4両目に乗車していた乗客数と死者数の特定が困難であり、様々な推定値が提示されています。

事故原因と裁判

事故原因は、貨物列車の入換作業における信号係員と操車係員の連携不足と、進路確認の不徹底、そして信号係員による適切な列車防護措置の欠如であると結論づけられました。裁判では、操車係員と信号係員の2人が業務上過失致死傷の罪で起訴され、実刑判決を受けました。

事故後と慰霊碑

事故から22年後の1965年、現場近くの桜川河畔に木製の供養塔が建てられましたが、老朽化が進んだため、1986年には黒御影石製の新たな慰霊碑が建立されました。この慰霊碑には、裁判記録に掲載された96名の犠牲者氏名が刻まれています。しかし、記録に残らなかった犠牲者もいたと推測され、慰霊碑にはその冥福も祈られています。現在も、車両が転落した桜川橋梁には、当時のままのトラス構造が残されています。

まとめ

桜川橋梁上列車三重衝突事件は、戦時下の混乱と安全管理の甘さが重なった結果起きた悲惨な事故でした。この事故は、日本の鉄道史における重要な教訓として、現在も記憶に留め置かれるべきでしょう。犠牲者の方々への鎮魂と、二度とこのような事故が起こらないよう、安全意識の向上に努めることが重要です。

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