梅若六郎 (55世)

五十五世梅若六郎について

五十五世梅若六郎（うめわか ろくろう、1907年8月3日 - 1979年2月8日）は、日本の伝統芸能である能楽において非常に重要な存在であり、観世流のシテ方能楽師として広く認知されています。彼の本名は梅若亀之（うめわか たかし）、また別名として梅若景英や梅若六之丞を持ち、三代梅若実を追贈されています。本記事では、彼の生涯、業績、そして残した作品について詳しく述べていきます。

生い立ちと経歴

梅若六郎は、東京の浅草厩橋で五十四世梅若六郎（後の二代梅若実）を父に持つ家庭に生まれました。彼の祖父である初代梅若実は、明治時代の三名人の一人とされ、伝統芸能の基盤を築いた人物でした。彼の弟には梅若雅俊と梅若恭行がおり、次男としては五十六世梅若六郎がいます。

梅若六郎は1911年に「忠信」の法師役で初舞台を踏み、1915年には「菊慈童」で初めてシテ（主役としての演技）を務めました。数々の舞台を重ねる中で、彼は1928年に「翁」を披露し、1944年には五十五世梅若六郎を襲名します。

芸術活動

戦後、彼は1949年に厩橋の能楽堂が戦災で焼失した際、後援会長の協力を得て東京・東中野に能楽堂を移転しました。1954年には観世流と梅若流との長年の抗争に終止符を打ち、全員観世流に戻るという英断を下しました。これにより、彼は日本の能楽界の調和を図る重要な役割を果たしました。

1957年には能楽協会の理事に就任し、同年には重要無形文化財「能楽」の保持者として認定されました。1958年には「船弁慶」のシテにより芸術祭文部大臣賞を受賞し、翌年の1959年には大阪市民文化祭賞も獲得しています。

1960年には梅若能楽学院を創立し、初代理事長に就任しました。この学院は日本初の能の専門学校として業界に大きな影響を与えました。1962年には「きさらぎ会」を結成、さらに1964年の東京オリンピックの芸術部門にも参加し、国際的な評価を高めました。

海外公演と栄誉

1965年には欧米での公演を実施し、1968年にはアメリカやメキシコでも演技を披露しました。1976年に紺綬褒章を受章し、1977年には勲三等瑞宝章も受賞しています。これらの受賞は、彼の芸術に対する貢献を象徴しています。

2017年には三代梅若実を追贈され、彼の能楽界における地位と影響力が再確認されました。

著作とメディア

梅若六郎はまた、著作活動にも積極的でした。彼の著書『謡を始める人のために』は1964年に池田書店から出版されています。さらに、NHKエンタープライズからは彼の演目を収めたいくつかのDVDもリリースされています。これにより、能楽に興味を持つ人々への影響を広げています。

結論

五十五世梅若六郎は、能楽界に多大な影響を与えた芸術家であり、その活動は日本文化の宝である能楽の発展に寄与しました。彼の生涯は、伝統を守りながら新しい道を切り拓く姿勢を示しており、後の世代にとっても大きな模範となることでしょう。

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