観世流

観世流（かんぜ-りゅう）

観世流は、日本の能楽における主要な流派の一つであり、特にシテ方の流派として広く知られています。流派の起源は、観阿弥にまでさかのぼり、その後彼の子である世阿弥が能楽の大成者として名を馳せました。現在の当主は二十六世観世清和で、流派の伝統は続いています。

流派の特徴

観世流の特徴として、豊かで洗練された芸風が挙げられます。シテ方の演技は、音色の高い謡を用いることが特徴的で、特に型がまろやかであるため、観客にとっても心地よい印象を与えます。観世流では、謡を行う際に「ギン」を出さない（発声が華やかである）ことが特徴であり、これは他の流派との大きな違いです。

観世流はその大きさゆえに、内部に多数の派閥が存在し、それぞれが微妙に異なる芸風を持っています。そのため、観世流のすべての演者が同じスタイルで演技をするわけではなく、多様性が求められています。また、戦後には『三山』『求塚』『蝉丸』などの曲が復曲され、現在の演目数は210番に達しています。

観世流の歴史

観世流は、14世紀中頃に観阿弥が大和猿楽の結崎座から新たな流派を興し、以降、世阿弥の時代に能楽の様式が確立される過程を経て進化してきました。世阿弥は多くの能を作り出し、能楽の理論も発展させました。彼の作品や理論は今でも能楽師に受け継がれています。

その後、音阿弥やその子孫たちによって、観世流は室町時代の猿楽の中心として知られるようになり、徳川幕府の後援を受けながら名声を高めました。音阿弥の七男・信光やその子・長俊もまた流派の発展に寄与し、観世流の名は名人として伝えられてきました。

江戸時代に入ると、観世流は一層の盛況を見せ、十五世観世元章の時代には、徳川家重や家治の能師範を独占し、観世流の圧倒的な地位が確立されました。元章の業績としては、さまざまな謡本の改訂や伝書の研究があり、明和改正謡本の刊行は特に重要です。これにより、当時の能楽師たちは新しいスタイルの能に挑戦し、新たな演技が生まれるきっかけとなりました。

明治時代に入ると、観世流は一時衰退の時期を迎えますが、梅若実などの演者によって復興が図られました。彼は明治の三名人の一人とされ、東京で観世流の復活に貢献しました。

近現代の観世流

昭和時代に入り、観世流は再び注目を集め、現在でも数多くの能楽師が存在します。観世流は多くの名家が存在し、それぞれの家が独自のスタイルを持っていることが特徴的です。また、観世流は京舞井上流との関係が強く、相互に影響しあっている部分もあります。

現代では、観世清和がその伝統を受け継ぎ、能楽の魅力を広めるための活動を続けています。流派は、シテ方だけでなく、囃子方も含め、さまざまな方面で成長を遂げています。このように、観世流はその歴史と伝統を尊重しながら、新しい時代に適応し続けています。

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