梅若流

梅若流（うめわかりゅう）

梅若流は、1921年（大正10年）に設立が企図され、1925年（大正14年）から1954年（昭和29年）まで存在した能楽シテ方の流派です。観世流から梅若派の梅若万三郎、二世梅若実、六世観世銕之丞が独立し創設されました。しかし、1954年（昭和29年）に能楽協会の斡旋によって観世流に復帰しています。

設立の経緯

明治維新と梅若一門

明治維新の際、観世宗家は徳川家と共に静岡へ拠点を移しましたが、1875年（明治8年）に東京へ戻りました。この間、江戸・東京で能楽を守り続けたのが、観世流の初世梅若実と五世観世鐵之丞でした。初世梅若実は1828年（文政11年）に熊谷の鯨井家に生まれましたが、梅若六郎家に後継ぎがおらず、鯨井家からの養子を迎えることで借金を相殺する取り決めがなされ、梅若家を継ぐことになりました。

免状問題

初世梅若実は、明治時代に入ると弟子に対して独自に能役者の免状を発行するようになり、これが観世流内部で問題視されました。初世梅若実の存命中は表面化しませんでしたが、彼の死後、観世宗家と梅若一門の間で免状問題が再燃し、1925年（大正14年）に梅若一門（梅若六郎家、梅若吉之丞家、観世鐵之丞家）は観世流から除名されるに至りました。

梅若流の設立

観世流から除名された梅若一門は、協議の結果、梅若流として活動していくことを決定しました。しかし、家元を誰にするかで意見が分かれ、決定には至りませんでした。当時、梅若一門には五十四世梅若六郎、梅若万三郎、六世観世鐵之丞という実力者がおり、それぞれが自身の師を家元に推したことが背景にありました。また、観世鐵之丞は観世分家の当主であり、梅若万三郎は五十四世梅若六郎の実兄であったため、単純に五十四世梅若六郎を家元とする案では合意が得られませんでした。最終的に、梅若万三郎が家元となることで決着しました。

分裂と観世流への合流

1921年（大正10年）に梅若流は発足しましたが、直後の関東大震災で梅若六郎家は能舞台を失うなど大きな打撃を受けました。さらに、1932年（昭和7年）までに観世鐵之丞家、梅若万三郎家が相次いで観世流に復帰し、梅若流には梅若六郎家のみが残されることとなりました。五十四世梅若六郎にも観世流への復帰を促す動きがありましたが、「自分の代で観世流に戻ることはできない」として拒否しました。その後、五十四世が隠居して二世梅若実となり、五十五世梅若六郎が梅若流の家元となった1954年（昭和29年）に、能楽協会の仲介により梅若流は観世流に合流を果たしました。

関連項目

* 梅若正二

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