梨谷川

梨谷川

梨谷川（なしだんがわ）は、富山県南砺市の五箇山地域を流れる河川の一つで、庄川の支流にあたります。その流域は、かつて平村と呼ばれた地域の北部一帯に位置しています。

流路の多様性

この川は、なだらかな地形が広がる道谷高原を源流としており、五箇山を流れる他の河川と比較して、上流部は比較的穏やかな流れを見せます。宮谷、鍋床谷、美ヶ谷といった複数の沢筋が道谷付近で合流し、一本の梨谷川となって、現在のたいらスキー場に隣接する梨谷集落の北側を東へと流れていきます。

古くは、この梨谷川に沿って進んだ後、山道を越える経路が主要な交通路でした。しかし現在では、梨谷大橋で川を渡り、五箇山トンネルを経由して平野部へと至る国道304号が、この地域を貫く主要幹線道路となっています。

梨谷大橋より東側、梨谷川の中流域に入ると、その様相は一変します。深く切り立った狭い渓谷が連続し、随所で大きな落差を伴う険しい流れとなります。庄川との合流点から梨谷大橋にかけては、梨谷川の南岸に沿って林道が整備されており、この林道から対岸の谷倉谷方面へ渡る道も存在します。

川筋は下流へ向かうにつれて次第に平坦で単調な様相を呈しますが、古くから名勝として知られる「千畳岩」までは、依然として起伏に富んだ流れが続きます。千畳岩は川幅いっぱいに広がる巨大な岩で、周辺の河床に多く分布する花崗岩とは異なる流紋岩質であることから、上流部から何らかの理由で運ばれてきたものと推測されています。千畳岩より下流は広々とした河原となり、大渡橋の近くで庄川に合流します。合流地点の庄川は、下流にある祖山ダムの影響で広大な湖面を形成しており、特に庄川の増水時には、その湖面が梨谷川の下流部まで大きく広がります。

地質と伝説

梨谷川流域の地質としては、先カンブリア時代に形成されたとされる飛騨変成岩などが分布するほか、石灰岩が随所に見られます。石灰岩は浸食されて穴ができやすいため、「こうした穴がヘビの棲み処となり、時折大型のヘビも目撃されることがある」と言い伝えられています。

梨谷集落には、「きいじゃ」（木地屋）という家筋に伝わる伝説があり、これに地質が関連するとも言われています。かつてそこに類まれな怪力の男がおり、梨谷川に棲む大蛇を退治したという話や、その際の鱗を祠に納めたという伝承が語り継がれています。石灰岩の穴と大型のヘビの目撃談が、この梨谷川の大蛇伝説の起源となったという説も唱えられています。

主な支流

梨谷川の主な支流には以下のようなものがあります。

宮谷
鍋床谷
* 美ヶ谷

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