森中蕃

森中蕃：実業家からユニークな馬主へ

森中蕃（もりなか しげる）氏は、1934年11月29日、兵庫県神戸市に生まれ、2022年10月17日、87歳で亡くなりました。日本の実業家として光証券株式会社を牽引し、代表取締役会長の座にまで上り詰めた人物です。同時に、中央競馬および地方競馬の馬主としても広く知られており、そのユニークな馬名と類まれな馬選びのセンスで競馬界に大きな足跡を残しました。

光証券での活躍

森中氏は1952年に光証券に入社。着実にキャリアを積み重ね、1977年には取締役、1978年には常務取締役、1980年には代表取締役副社長へと昇進しました。そして1982年には代表取締役社長に就任、光証券を率いるトップに立ちました。2002年には大阪証券取引所の取締役に就任するなど、証券業界における影響力も強めていきます。2003年には代表取締役会長に就任、社長には息子の森中寛氏が就任しました。2010年に会長を退任した後も、2021年3月には光証券株式の33.37％を保有する筆頭株主として、会社を支え続けました。

独自の馬主活動

森中氏の馬主としての活動は1970年代に始まりました。宝石卸売業時代の仲間との交流がきっかけとなり、馬主の世界へと足を踏み入れます。阪神馬主協会会長、日本馬主協会連合会相談役を歴任し、競馬界に貢献しました。

彼の馬主としてのモットーは「安くて走る馬を見つける」こと。馬選びにおいては、歩様を重視し、「前脚が来た後に、後ろ脚がグッと踏み込んでこないといけない」と語っています。外見よりも、その走りへの潜在能力を見抜く鋭い眼力を持っていました。

さらに森中氏を特徴づけるのは、その馬名です。1995年頃から、毎年異なるテーマを設定し、馬名をつけていました。「マジック」シリーズ、「宝石」シリーズ、「神」シリーズなど、その独創的な命名センスは競馬ファンに大きな話題を提供し続けました。時には「株用語」や「ありがとうを意味する言葉」といった、彼自身の経歴や関心に由来するテーマを用いることもありました。中には、スポーツ報知の読者から募集した馬名を採用することもありました。しかし、「格好悪い」と判断したテーマは容赦なく却下し、常に独自のセンスを貫き通しました。

数々の名馬とエピソード

森中氏は多くの名馬を所有し、数々のレースで好成績を残しました。代表的な所有馬としては、セイユウ記念を制したシゲルホームラン、新潟ジャンプステークスを制したシゲルジュウヤク、そして2021年のフィリーズレビューを制したシゲルピンクルビーなどが挙げられます。特にシゲルピンクルビーの優勝は、森中氏にとってサラブレッド系の平地重賞初制覇という大きな喜びとなりました。

また、森中氏の所有馬は、未勝利戦で複数頭が出走することも珍しくありませんでした。2011年には、1つのレースに5頭もの「シゲル馬」が出走するという珍しい光景が見られました。地方競馬では、8頭立てのレースで5頭が「シゲル馬」ということもありました。

数々の成功体験だけでなく、挫折も経験しました。2015年には、東西の新馬戦で相次いで所有馬が故障するという悲劇に見舞われました。しかし、彼は常に前向きに、次の世代の馬への期待を胸に、馬主活動を続けました。

シゲルホームラン以外にも、シゲルリジチョウは森中氏にとって思い出深い馬でした。元JRA理事長である土川健之氏とのエピソードと共に、彼の馬主としての情熱と人柄が感じられます。

森中氏の死去後も、彼の所有馬は一時的に彼の名義で出走し続けました。その後、妻である啓子氏、そしてさらに関美和氏へと名義が変更されました。

森中蕃氏は、実業家としての成功と、ユニークな馬主活動を通して、競馬界に大きな足跡を残しました。彼の生き様は、多くの競馬ファンに記憶され続けるでしょう。

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