森和夫

森 和夫（もり かずお）

森和夫は、日本の実業家であり、冷蔵業界の発展に貢献した東洋水産の創業者です。1916年4月1日、静岡県賀茂郡田子村に生まれ、静岡県立豆陽中学校（現在の静岡県立下田高等学校）および水産講習所（現・東京海洋大学）を卒業しました。

略歴

森の実家はかつて漁業を営んでいましたが、父の代に冷蔵製氷業に転業し、1919年に田子製氷株式会社を設立。この会社は2007年に東洋水産に吸収合併されました。和夫は水産講習所を卒業後、水産会社に入社しますが、間もなく戦争に徴兵され、旅順での陸軍予備士官学校を経て1939年のノモンハン事件に従軍します。彼が所属していた部隊は大きな被害を受けましたが、和夫は奇跡的に生き延び帰国しました。

1944年に結婚したものの、その1ヶ月後に再び徴兵され、戦後は中国大陸で約半年間捕虜にされる生活を送りました。1946年に帰国後、彼は就職した水産会社の子会社に配属され、その取締役にまで昇進しましたが、その会社は経営難に陥り任意整理で廃業となりました。

1950年、彼は水産講習所の同級生と共に、横須賀市内で冷蔵庫を買い取り、横須賀冷蔵庫株式会社を設立しました。さらに1953年には、同社の東京支店を負債ごと買い取る形で新たに横須賀水産株式会社を設立し、これが後の東洋水産（1956年に社名変更）へと発展していきました。

経営者としての軌跡

森は社長として東洋水産の経営を拡大し、同社は冷凍食品や即席麺などで知られるようになります。1980年には脳梗塞で倒れ、約2ヶ月の入院生活を余儀なくされたものの、幸いにも大きな後遺症はなく職場に復帰しました。1995年には同社の会長、1999年には相談役として経営の安定に努めました。

2011年7月14日、彼は肺炎のため95歳で亡くなりました。彼の死は日本経済界において大きな損失とされました。

エピソード

森和夫の多様な人生は、経済小説家の高杉良が光を当てるきっかけともなりました。高杉は、彼本人を説得し、『燃ゆるとき』という小説を執筆しました。また、森は生前、一切の勲章や名誉を辞退し、財界活動から距離を置いていました。退職金についても「高過ぎる」として、額を7分の1に減額させるなどの姿勢を示しました。

森和夫の生涯は、日本の実業家としての高潔さや、業界への貢献が際立つものであり、多くの人々に影響を与え続けています。

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