森本忠夫

森本忠夫：実業家、文筆家としての生涯

森本忠夫（1926年11月17日 - 2015年5月11日）は、日本の実業家、そして文筆家として多岐にわたる分野で活躍した人物です。京都府に生まれ、戦時中は海軍航空隊員として太平洋戦争に従軍した経験を持ちます。戦後、1952年に京都大学経済学部を卒業後、東洋レーヨン（現・東レ）に入社しました。

東レでは取締役、東レ経営研究所社長などを歴任し、実業家としての手腕を発揮しました。その後、龍谷大学経済学部教授として教鞭をとり、1999年まで後進の育成に尽力しました。

戦争体験とソ連研究

森本は、自らの軍歴から、特別攻撃隊や太平洋戦争における日本の敗因に強い関心を持ちました。また、東レ時代にはソビエト連邦との貿易実務に携わった経験から、ソ連の政治、経済、交渉術についても深い知識を持っていました。これらの経験を基に、彼は多くの著書を執筆し、独自の見解を提示しました。

著作活動

森本の著作は、その多様な関心と深い分析力が反映されています。初期の著書には、ソ連との貿易に関する実務的な内容や、海外における日本人の評判を分析したものが含まれます。また、ソ連崩壊前後の経済状況や、ゴルバチョフのペレストロイカについても詳細に分析し、その動向を鋭く予測しました。さらに、太平洋戦争に関する著作では、ミッドウェー海戦やガダルカナル戦などの戦訓を分析し、組織論や戦略論の観点から考察を行いました。

特に、『魔性の歴史 マクロ経済学からみた太平洋戦争』や『特攻 外道の統率と人間の条件』は、太平洋戦争を経済学や組織論の視点から捉え直したもので、多くの読者に衝撃を与えました。森本の著作は、単なる歴史の記録にとどまらず、現代社会にも通じる普遍的な教訓を含んでいます。

主な著書

ニッポン商人赤い国を行く (1965) - ソ連との貿易実務を描いた初期の著作
日本輸出戦線異状あり その生態・解剖・秘話 (1966) - 海外における日本人のビジネス活動を分析
奇妙な惑星から来た商人 海外における日本人の評判 (1970) - 日本人の国際的な評価を考察
ロシア商法の知恵 相手を呑み込む戦訓八章 (1973) - ロシアとのビジネスにおける教訓を提示
賑々しき死者たち (1976) - 経済と社会の関係を考察
銀行大戦争 崩壊する日本の金融構造 (1979) - 日本の金融構造の問題点を指摘
オイル・シンドローム (1980) - オイルショック後の経済状況を分析
魔性の歴史 マクロ経済学からみた太平洋戦争 (1985) - 太平洋戦争を経済学的に分析
ソ連流交渉術・71の原則 “赤いしたたかさ"の秘密を探る (1986) - ソ連との交渉における原則を解説
住友銀行会長磯田一郎の企業統帥論 (1987) - 企業経営におけるリーダーシップ論を考察
ソ連について ペレストロイカは「第二の革命」となるか (1988) - ゴルバチョフのペレストロイカを分析
ソ連を知らないで金儲けできるか (1989) - ソ連の経済状況とビジネスの可能性を探る
ソ連経済730日の幻想 ゴルバチョフのペレストロイカは終わった (1990) - ペレストロイカの限界を指摘
敗亡の戦略 山本五十六と真珠湾 (1991) - 真珠湾攻撃の戦略を分析
最新・ソ連経済の読み方 連邦崩壊と日本の対応 (1991) - ソ連崩壊後の経済動向と日本の対応を考察
破局への戦略 日本海軍とミッドウェー (1992) - ミッドウェー海戦の戦略を分析
特攻 外道の統率と人間の条件 (1992) - 特攻隊の悲劇を組織論的に考察
さまよえるロシア 破局の経済改革の下で (1993) - ロシアの経済改革の現状を分析
貧国強兵 「特攻」への道 (1993) - 特攻隊に至る日本の社会構造を考察
ロシア経済改革の失敗 ガイダリズムの終焉とその後 (1995) - ロシアの経済改革の失敗を分析
ガダルカナル勝者と敗者の研究 (2002) - ガダルカナル戦の勝敗を分析
悲劇の幕開け ガダルカナル勝者と敗者の研究 (2002) - ガダルカナル戦の開戦当初の状況を分析

その他の活動

森本は、実業家、教育者、文筆家として、それぞれの分野で優れた業績を残しました。その幅広い知識と深い洞察力は、多くの人々に影響を与え、現代においてもその著作は読み継がれています。彼の著書は、歴史、経済、組織論、リーダーシップなど、多岐にわたる分野を横断的に考察する上で、貴重な資料となっています。

死去

森本忠夫は、2015年5月11日、肺炎のため88歳でその生涯を閉じました。


森本忠夫の業績は、彼の著作を通じて今もなお多くの人々に影響を与え続けています。彼の多角的な視点と鋭い分析力は、現代社会を理解する上で貴重な示唆を与えてくれます。

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