森永LOVE

森永LOVE

「森永LOVE（もりながラブ）」は、かつて日本のファーストフード業界に存在したチェーンです。1974年（昭和49年）12月、森永製菓の100%子会社であった森永キャンディーストア（後にレストラン森永に改称）が東京都港区三田に1号店をオープンし、その歴史をスタートさせました。当時掲げられたキャッチフレーズは「おいしさ分け合おう!」で、多くの利用客に親しまれ、「ラブ」という略称でも呼ばれていました。

このチェーンは、東京23区を中心とした首都圏に集中的に出店する「ドミナント戦略」を採用し、最盛期には約50店舗を展開する規模に成長しました。メニューはハンバーガーを主軸に、フライドポテトやアイスクリーム、シェイクなど、ファーストフードの定番を揃えていましたが、中でも特筆すべき人気を集めたのが「ツナマフィン」です。これは、当時としてはまだ珍しかったイングリッシュ・マフィンを使用し、ツナフィリングとスライスチーズを挟んだ独特のメニューでした。

森永LOVEの事業は、1990年代に入ると大きな転換期を迎えます。1996年には、長らく提携関係にあった西武商事（現在の西武リアルティソリューションズ）との協力関係を解消。新たな提携先として日本たばこ産業（JT）と手を組みますが、この動きはやがてブランド自体の終焉につながります。JTは同時期にアメリカの大手バーガーキングと合弁でバーガーキングジャパンを設立しており、その資本力を背景に森永LOVEはバーガーキングジャパンに買収されることとなります。これにより、既存の森永LOVE店舗は順次バーガーキングの店舗へと転換されていきました。

しかし、バーガーキングとJTの間には経営方針などを巡る軋轢が生じ、バーガーキングはわずか数年後の2001年には日本市場から一時撤退を決断します。この撤退に伴い、旧森永LOVEから転換されたバーガーキング店舗の多くは、競合であるロッテリアやファーストキッチンといった国内のファーストフードチェーンに売却され、森永LOVEの痕跡はさらに薄れていきました。

森永LOVEの特徴として、そのユニークな職制や社内文化が挙げられます。例えば、各店舗には日々の売り上げ目標が設定されていましたが、その金額は数字ではなく、旧社名「森永キャンデーストア」のアルファベットに0から9までの数字を割り当てた独自のコードで表記されていました（例: 80万円はOE、115万円はCCY）。

アルバイトスタッフは「フェロー」と呼ばれ、初期は白地に緑色のストライプ、後に茶系のストライプが入ったユニフォームを着用しました。フェローには勤務実績やスキルに応じた独自のランク付けがあり、胸にはそのランクを示すハートマークのバッジが付けられました。バッジ無しの「トレーニー」から始まり、「フェロージュニア♥」、「フェローシニア♥♥」、そして最高位の「フォアマン♥♥♥」まで段階がありましたが、実際の時給差はわずかでした。後にパスタメニューなどが導入された時期には、「フェローリーダー」や、店長業務の代行も可能な「サブマネージャー」といった上位職位も設けられました。これらの上位者は社員（マネージャー、MGR）と同等のネームプレートが支給され、特にサブマネージャーにはMGRとほぼ同じ制服が与えられました。これらのランクは、MGRの本社への進言などによって昇格が決まる実力主義的な側面があり、スタッフのモチベーション向上や店舗の活性化につながったと言われています。

また、全店ではありませんでしたが、「フェローノート」と呼ばれるスタッフ間の交換ノートのようなものが存在しました。これは、日中働く大学生や主婦層と、夕方から働く高校生など、勤務時間が異なり普段直接顔を合わせる機会が少ないスタッフ同士が、仕事の引き継ぎや日々の出来事を書き込んで交流するためのものでした。時にはマネージャーも加筆し、このノートを通じたコミュニケーションが、勤務時間外の食事会やスキーツアーといった交流にも発展し、アルバイトスタッフ間の一体感醸成に大きく貢献しました。

メディアにも登場しており、TBSの人気テレビドラマ『3年B組金八先生』シリーズでは北千住店が時折映り、『1年B組新八先生』では撮影の舞台としても使用されました。また、後に製作された映画『ヨコハマメリー』（2006年）では伊勢佐木町店が、バブル期を舞台にした『バブルへGO!! タイムマシンはドラム式』（2007年）では六本木店が再現されるなど、当時の雰囲気や文化を象徴する存在としても描かれています。

短い期間ではありましたが、森永LOVEはその独自のメニューやアルバイト制度、そして首都圏における積極的な店舗展開によって、日本のファーストフード史の一角を担った存在でした。

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