森狙仙

森狙仙：写実とユーモラスさを融合した江戸時代の動物画家

森狙仙（もり そせん、1747年～1821年）は、江戸時代後期を代表する絵師の一人です。大阪を中心に関西で活躍し、動物画、特に猿画の名手として知られています。狩野派の伝統を学びながらも、円山応挙ら当時を代表する画家たちの影響を受け、独自の画風を確立。写実的な描写とユーモラスな表現を融合させた作風は、多くの人々を魅了しました。

不明な点も多い生涯

狙仙の生涯については、詳細な記録が残っておらず、不明な点も多いとされています。絵師の森如閑斎の三男として生まれ、勝部如春斎に師事して狩野派の画技を修めたと伝えられています。その後、円山応挙らに影響を受け、写実性を重視した独自の画風を確立。特に猿画において高い評価を受け、その名は広く知れ渡ることになります。

天明8年（1788年）成立と推定される『巴人集拾遺』には、狙仙の猿画を称える狂詩が掲載されており、当時既に高い評価を得ていたことを伺わせます。享和2年（1802年）には『浪華なまり』で流行作家として紹介され、文化4年（1807年）には画号を「祖仙」から「狙仙」と改名。文化6年（1809年）には、オランダから初めて日本に持ち込まれたテナガザルの絵を描き、記録に残しています。

文化11年（1814年）には柿本神社に絵馬を奉納。文政4年（1821年）に大阪で没しました。墓所は西福寺（大阪市北区）にあります。

猿画を中心に、多様な動物を描いた作品

狙仙の作品の90％以上は猿の絵であると言われています。その特徴は、柔らかな体毛の質感、生き生きとした表情、ユーモラスな仕草、そして巧みな擬人化による親しみやすさです。狙仙は、生きた猿を観察するために、猟師から猿を入手し、山野で長期間に渡り観察を続けたという逸話も残っています。

猿画以外でも、鹿、狸、猫、虎など様々な動物を描いており、いずれも高い評価を得ています。一方、山水画や人物画の作品は少ないとされています。現在、国の重要文化財以上の指定を受けている作品はありませんが、『秋山遊猿図』は重要美術品に認定されています。また、『雨中桜五匹猿図』は、2005年の切手趣味週間にちなむ切手の図案として採用されています。

森派の祖として

狙仙は、養子に迎えた森徹山を筆頭に、森一鳳、森寛斎といった後継者を育て、森派と呼ばれる画家の系統を築きました。弟子には森春渓、中殿暁園らがいます。森派は、狙仙の写実的でユーモラスな画風を受け継ぎ、江戸時代後期の絵画界に貢献しました。

まとめ

森狙仙は、写実的な描写とユーモラスな表現を巧みに融合させた動物画家として、江戸時代後期の絵画史に大きな足跡を残しました。特に猿画の技術は卓越しており、多くの作品が現在も人々を魅了しています。その画風は、弟子や後世の画家たちに受け継がれ、日本の絵画に大きな影響を与えました。その生涯や作品を通して、江戸時代後期の絵画文化の一端に触れることができます。

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