森陶岳

森陶岳：備前焼の金字塔を築いた陶芸家

森陶岳（もり とうがく、1937年3月23日-）は、岡山県出身の陶芸家です。本名は才蔵。備前焼窯元六姓の流れを汲む家系に生まれ、幼い頃から備前焼に囲まれた環境で育ちました。岡山大学教育学部特設美術科卒業後、中学校の美術教師を務めた後、陶芸の道へと進みます。

古備前への探求と大窯への挑戦

森陶岳氏の陶芸家としての歩みは、古備前の魅力解明への飽くなき探求心と、それを実現するための壮大な挑戦の歴史です。初期の頃は様々な窯を築き、焼成を繰り返しながら技術を磨きました。しかし、小さな窯では古備前の奥深さを解き明かすには限界があると悟り、中世の古備前を焼成した大窯を現代に再現するという、前例のない計画を立案します。

その実現のため、兵庫県相生市内の山中に全長46メートルの半地下直炎式登り窯を築き、1980年、53日間にわたる大規模な焼成を行いました。この挑戦は、多くの備前焼を世に送り出すだけでなく、森陶岳氏の陶芸家としての地位を確固たるものにしました。

その後、岡山県瀬戸内市牛窓町寒風に移り、全長53メートルの「寒風大窯」を築き、1986年から2011年にかけて計6回の焼成を行いました。さらに、前人未踏の規模を誇る全長85メートル、幅6メートル、高さ3メートルの「寒風新大窯」の築窯にも着手。弟子たちとの共同作業を経て、2008年に完成させました。そして、2015年にはこの新大窯を用いて、約1年に及ぶ備前焼初窯焼成を敢行しました。

数々の受賞歴と作品

森陶岳氏の作品は、その圧倒的なスケールと力強さが特徴です。大甕や大壷といった大型作品から、繊細な茶碗や香炉まで、幅広い作品を制作し、その芸術性は高く評価されています。伊勢神宮、厳島神社、出雲大社、東大寺といった由緒ある神社仏閣や、メトロポリタン美術館、ボストン美術館、東京国立近代美術館などの国内外の著名な美術館にも作品が収蔵されています。

その功績は数々の受賞歴にも表れています。1969年には日本陶磁協会賞を受賞し、1996年には山陽新聞社賞（文化功労）を受賞。2002年には日本陶磁協会賞金賞を受賞、2005年には文化庁長官表彰、2006年には紫綬褒章を受賞するなど、その芸術的才能は広く認められています。また、東京、大阪、京都、広島、奈良などで巡回された大規模な個展「古備前を超えて　森陶岳展」も開催されています。

出版物

森陶岳氏自身の経験や哲学を記した著書も多数出版されています。代表的な著書として、『古備前を超えて　森陶岳』（東方出版発行）、『森陶岳大窯の引き寄せたもの』（吉備人出版発行）などが挙げられます。これらの著書は、森陶岳氏の陶芸への情熱、そして備前焼という伝統を現代に継承しようとする強い意志を伝える貴重な資料となっています。

まとめ

森陶岳氏は、単なる陶芸家という枠を超え、備前焼の歴史に新たな地平を切り開いた先駆者と言えるでしょう。その挑戦的な精神、卓越した技術、そして古き良き伝統への深い敬意は、後世の陶芸家たちに大きな影響を与え続けることでしょう。彼の大窯は、単なる焼成施設ではなく、森陶岳氏の情熱と信念を凝縮した、まさに芸術そのものです。これからも、その偉大な功績は多くの人々に語り継がれていくことでしょう。

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