椋尾篁

椋尾 篁（むくお たかむら）

椋尾篁は1938年1月1日に長崎県佐世保市で生まれ、アニメーション美術監督として多くの作品に関与した人物です。彼は武蔵野美術学校の洋画科を卒業し、その後は“光と影と質感の詩人”として知られるようになりました。彼のキャリアは、美術の技術が進化する中でも今なお輝いています。

来歴

椋尾の生家は代々平戸藩に仕えていた焼物店でしたが、彼が生まれた年に閉店しました。高校を卒業した後、大阪に移り住み、凸版印刷での仕事を始めるものの、次第に工業的な作業に対し違和感を覚え、2年で退職。子供の頃から持っていた絵を描く楽しみを思い出し、再び美術の道を目指すことを決意しました。そして武蔵野美術学校に進学します。

美術学校を卒業したものの、すぐには仕事が見つからず、同校の先輩である半藤克美の誘いで虫プロダクションに入社。以降、彼は『銀河鉄道999』や『幻魔大戦』などの劇場作品、また『母をたずねて三千里』や『美少女戦士セーラームーン』など数多くのテレビシリーズにおいて、美術監督や美術デザインを担当しました。

1976年には『母をたずねて三千里』の現地ロケに高畑勲や宮崎駿と共に出向き、背景美術における光と影の使い方を探求しました。その後1981年に公開された『セロ弾きのゴーシュ』では、水墨画風の世界観に陰影を施し、質感を表現することでその技術を更に高めました。

特に『銀河鉄道999』をはじめとするりんたろう監督作品では、SF美術のリーダーとして名を馳せました。徳間書店アニメージュ主催のアニメグランプリでは、美術部門の人気投票で5年連続第1位を獲得し、1970から80年代の日本アニメの美術の質を飛躍的に高めることに貢献しました。一緒に仕事をした大友克洋は、椋尾の大胆な色使いに驚き、アニメーションは保守的でなく積極的に表現していくべきであると認識を新たにしたと語っています。

2004年には、アニドウによって彼の背景画や美術ボードを収めた『椋尾篁アニメーション美術画集』が1000部限定で出版され、彼の業績を称える形となりました。

略歴

• - 1963年: 武蔵野美術学校洋画科を卒業し、虫プロで『鉄腕アトム』の背景を担当。
• - 1964年: 虫プロから東京ムービーに入社。
• - 1965年: 東京ムービーを退社し、半藤美術研究所などに在籍。
• - 1971年: ムクオスタジオを設立。
• - 1975年: 『フランダースの犬』の背景なども担当。
• - 1978年: 劇場作品『銀河鉄道999』で美術監督を務める。
• - 1992年: 癌により亡くなる。

椋尾篁の名前は、アニメ界において今もなお語り継がれ、影響を与えています。特に、彼が関わった「セーラームーン」シリーズは、彼の美術が重要な基礎を形成した作品として知られています。彼のために作られた美術画集は、後世のアニメーターたちにとっても貴重な参考資料となっています。

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