植苗貝塚

植苗貝塚（うえなえかいづか）は、北海道苫小牧市植苗に所在する、縄文時代の人々が残した重要な遺跡の一つです。この貝塚は、およそ縄文時代前期の終わりから中期にかけて形成されたと考えられています。当時の地理環境は現在とは異なり、この場所はウトナイ湿原に面した、海が入り江状に入り込んだ内湾のほとりに位置していました。

貝塚があるのは、美々川と遠浅川に挟まれた美々台地の西側の斜面です。具体的には、現在の苫小牧市立植苗小中学校から北へおよそ500メートルほど進んだあたりに位置しています。

貝塚の地層からは、当時の人々が食料としていた大量の貝殻が出土しています。その中でも特に多いのはヤマトシジミですが、その他にもウネナシトヤマガイ、マガキ、アサリなど、塩分濃度の高い汽水域や海水の環境に生息する貝類が多く見られます。興味深いのは、マガキやウバガイの殻に丸い孔が開いているものがあることです。これは、単に手で拾うだけでなく、槍のような刺突具を使って貝を採取していた可能性を示唆しています。

貝殻の他にも、縄文時代の生活を物語る様々な人工遺物が出土しています。特に土器は、その形状や文様から大きく四つのグループに分類されています。

第一群土器: 植物の繊維を混ぜて作られ、表面に斜めの撚り糸の文様が施されています。
第二群土器: 口の部分が大きく開いた深い鉢の形をした土器で、植苗貝塚から見つかった土器の大部分を占めています。この種類の土器が、当時の人々の生活の中心で使われていたと考えられます。
第三群土器: 繊維を含まず、しっかりと焼かれて硬く、表面に粘土の帯が貼り付けられているのが特徴で、「余市式土器」とも呼ばれるものです。しかし、植苗貝塚から出土したのはわずか5点のみと、非常に少量です。
第四群土器: 口の部分が外側に反り返り、山のような突起を持つ土器です。

土器以外では、石器類や骨角器も見つかっていますが、その数はあまり多くありません。また、石器の中には完全な形をとどめているものが少ないという特徴があります。

植苗貝塚の発見は比較的最近のことです。1972年（昭和47年）5月8日、現在の福祉法人「緑星の里永光学園」の敷地内で道路工事が行われていた際に、丘陵の斜面から大量の貝殻が見つかりました。これが貝塚の存在を示すものとして、苫小牧市教育委員会に報告されました。

この発見を受けて、同年5月13日から21日にかけて、苫小牧工業高等学校の郷土研究部員の協力のもと、集中的な発掘調査が実施されました。この調査によって、貝塚の規模や含まれる遺物の内容が明らかになりました。

さらに、発見された貝塚の一部を保護するため、1973年（昭和48年）5月26日には、最も重要な部分である「第一貝塚」の上に、風雨から守るための覆い小屋の建設が始まりました。総工費88万5千円をかけて行われた工事は、同年7月12日に無事完成しました。

植苗貝塚は、縄文時代の人々がこの地域でどのように暮らし、どのような環境を利用していたのかを知るための貴重な手がかりを提供してくれる遺跡です。出土した貝や遺物からは、当時の食料獲得方法や土器文化の地域性などがうかがえ、北海道における縄文時代の研究に貢献しています。

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