椎名健

椎名 健

椎名 健（しいな けん）は、1941年に千葉県で生まれた日本の心理学者です。特に知覚や実験心理学の分野において顕著な功績を残し、長年にわたり大学で教育と研究に従事しました。

経歴

椎名健は、1965年に千葉大学文理学部人文学科心理学専攻を卒業しました。その後、東京教育大学大学院博士課程に進学しましたが、これを中途退学し、ペンシルバニア州立大学において心理学の研究を深めました。

教育・研究者としてのキャリアは、鳥取大学からスタートしました。同大学では教養部助教授を経て教育学部教授を務め、教育に貢献しました。その後、図書館情報大学教授に転じ、さらに筑波大学図書館情報メディア研究科の教授として多くの学生を指導し、研究活動を牽引しました。

2007年、筑波大学を定年により退官し、同大学の名誉教授の称号を授与されました。定年退官後も研究への情熱は衰えず、文教大学教授として引き続き教鞭を執り、2012年に退職するまで後進の育成に努めました。

研究分野と活動

椎名健の専門は知覚心理学および実験心理学です。人間の五感がどのように外界を知覚し、それが心の中でどのように情報として処理されるのか、といった基本的なメカニズムの解明に取り組んできました。特に、視覚における錯覚（錯視）に関する研究は広く知られており、この分野のエキスパートとして、日本錯視コンテストの審査員も務めています。

専門的な研究活動に加え、心理学の成果を一般の人々にも分かりやすく伝えるための活動にも力を入れました。人間の行動や思考の背後にある心理について、平易な言葉で解説する著作を多数発表しています。

主な著作

椎名健は、専門書から一般向けの啓蒙書まで、幅広いテーマで著作を刊行しています。その一部を以下に示します。

『男四十は伸びざかり 経験・専門を生かした能力開発法』（ごま書房 フロムフォーティズ、1991年）
『錯覚の心理学』（講談社現代新書、1995年）
『四十歳からの生き方 人生の折り返し点を、豊かで実り多くするには』（ごま書房 ゴマブックス、1995年）
『人はなぜ嘘をつくのか だます心理・だまされる心理』（ごま書房 ゴマブックス、1996年）

共編著・監修書も多く、他の研究者との共同作業を通じて、心理学の様々な側面を紹介しています。

『心理学スタディ・ガイド』（福富護共著、ブレーン出版、1977年）
『心理学パッケージ 不思議な世界・心の世界』（小川捷之共編著、ブレーン出版、1983年）
『心理学パッケージ』part 2-6（小川捷之共編著、ブレーン出版、1983年-1989年）
『男と女らしさの研究』（編、ブレーン出版 キャンパス∞ メンタル・ジョギング・メニュー、1984年）
『交遊術あ・ら・もーど』（編、ブレーン出版 キャンパス∞ メンタル・ジョギング・メニュー、1984年）
『からだと心の健康百科 ウェルネスとシェイプアップ』（編著、講談社現代新書、1998年）
* 『だまし絵・錯視大事典』（監修、あかね書房 トリックアート図鑑、2015年）

これらの著作は、知覚心理学の専門知識に基づきつつ、日常生活に潜む錯覚の面白さや、人間の様々な行動・感情の理由を解き明かすものであり、多くの読者に心理学への興味を促しました。

また、多数の学術論文も発表しており、研究者として学界にも貢献しています。詳細な論文リストはCiniiなどのデータベースで確認できます。

椎名健は、長年の研究と教育活動を通じて、知覚・実験心理学の発展に寄与するとともに、一般社会における心理学の理解と普及にも重要な役割を果たした心理学者です。

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