椎葉村

宮崎県椎葉村：秘境に息づく歴史と文化

椎葉村は、宮崎県の北部、九州山地の中央部に位置する山村です。その面積は全国の村の中で5番目の広さを誇りますが、急峻な地形のため、人が住める場所はごくわずかです。村の大部分は耳川の源流域であり、深い谷間を縫うように川が流れ、周囲を標高1000m級の山々が囲んでいます。

地理と気候

村の中心部、上椎葉地区には日本初の大規模アーチダムである上椎葉ダムがあり、日向椎葉湖がその水を湛えています。標高が高いため、九州南部でありながら冷涼な気候で、年間降水量は約2800mmに達する多雨地域です。夏から秋にかけては台風の影響で大雨になることもあり、冬は氷点下になる日もあります。村域の大部分は九州中央山地国定公園に指定されています。

歴史

椎葉村は、平家落人伝説が残る地としても知られています。壇ノ浦の戦いで敗れた平家の残党がこの地に逃れ、その後、那須氏がこの地を治めるようになりました。戦国時代には、那須氏が領主として勢力を誇りましたが、島津氏との戦いで多くの武将が命を落としました。江戸時代には、椎葉山騒動と呼ばれる事件が起こり、幕府の介入により多くの人々が犠牲になりました。その後、椎葉は人吉藩の支配下となり、庄屋や横目が山中を治めるようになりました。

日本民俗学の創始者である柳田國男は、椎葉村でフィールドワークを行い、その経験を基に『後狩詞記』を著しました。この研究は、当時の椎葉村長の中瀬淳の協力によって大きく進められました。

近現代

明治時代になると、椎葉村はいくつかの村が合併して誕生しました。1889年には、町村制施行により現在の椎葉村が発足しました。かつては日本で最も広い面積を持つ自治体でしたが、後に十津川[[村]]が誕生し、その記録は塗り替えられました。

1933年には、日向市街地と椎葉村を結ぶ県道が開通し、バス路線も開設されました。1949年には、西臼杵郡から東臼杵郡へ所属が変更され、日向方面との交流が深まりました。1998年には、十根川地区が重要伝統的建造物群保存地区に選定されました。2010年には、隣接する熊本県水上村との境界が確定し、村の面積が少し広がりました。

産業と文化

椎葉村の主な産業は、農業と林業です。特に焼畑農業は、日本で唯一継承されている地域があり、その伝統的な農法は貴重な文化遺産となっています。

村内には、椎葉神楽が伝承されており、その独特な音楽や舞いは、国の重要無形民俗文化財に指定されています。また、平家の落人伝説やひえつき節の発祥地としても知られ、その歴史と文化は訪れる人々を魅了します。その地理的な特徴や民俗的な背景から、「日本三大秘境の一つ」にも数えられています。

教育

椎葉村には、中学校1校、小学校6校があります。村内が広いため、椎葉中学校には寄宿舎があり、生徒の約8割が寮生活を送っています。

また、椎葉村は社会教育にも力を入れており、椎葉村開発センターや椎葉村図書館Katerieなどを活用して、様々な学習機会を提供しています。特に図書館Katerieは、最新の技術を導入した施設として、注目を集めています。

交通

椎葉村へのアクセスは、公共交通機関を利用する場合、最寄りの空港からバスやタクシーを乗り継ぐ必要があります。村内には鉄道駅がなく、鉄道を利用する場合は、日向市駅でバスに乗り換えることになります。村内では、椎葉村営バスや宮崎交通のバスが運行しています。

道路は、国道265号、327号、388号などが通っていますが、一部未舗装の区間や狭隘な箇所も残っています。近年、トンネルの開通や道路改良が進められていますが、依然として道路状況は厳しい場所もあります。

名所と観光

椎葉村には、数多くの名所や観光スポットがあります。上椎葉ダムは、日本初の100m級アーチダムであり、その美しい景観はダム愛好家からも人気があります。ダム湖の日向椎葉湖は、吉川英治によって命名されました。

また、国指定天然記念物である八村スギや大久保の大ヒノキは、樹齢800年を超える巨木であり、その圧倒的な存在感は見る者を魅了します。

椎葉村の伝統的な建築様式を持つ家屋が残る十根川地区は、国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されています。

祭事とイベント

椎葉村では、毎年9月に「ひえつき節日本一大会」、11月には「椎葉平家まつり」が開催され、多くの人々が訪れます。これらのイベントは、椎葉村の歴史と文化を体験できる良い機会となっています。

椎葉村は、その豊かな自然と歴史、文化が織りなす魅力的な場所です。ぜひ一度訪れて、その魅力を体感してください。

もう一度検索