椙岡俊一

椙岡 俊一（すぎおか しゅんいち）

椙岡俊一は、昭和から平成の時代において揺るぎない影響を持った実業家です。1940年4月1日、東京都に生まれた彼は、慶応義塾大学商学部を卒業後、1964年に阪急百貨店に入社しました。そのキャリアの中で、百貨店業界に数々の革新をもたらしました。

職歴と業績

椙岡は、入社後すぐにうめだ本店の子供服売り場を担当し、1980年代には自社ブランド「ポテトチップス」の立ち上げを行い、多くの顧客の支持を得ました。1990年代半ばには経営企画担当取締役として、さらなる成長戦略を切り開いています。その中でも、彼は経営の方針をわかりやすく説明し、情報の整理を得意とする人物として知られていました。

椙岡は、売上高の減少が3年続く中で次期社長に指名され、2000年に阪急百貨店の社長に就任しました。彼は、百貨店が専門業態として高質なニーズに応える時代に突入することを認識し、客層を絞り込む本店の売場改装を進めました。経営改革に取り組む中で、業界内での競争優位を狙いました。

彼が目指したのは、単なる売上の増加ではなく、来店頻度を上げることでした。物販を6割に抑える独自の方針を採用し、「百貨店は劇場、商品は役者、経営陣は劇場主」といった比喩を使い、顧客体験を重視した経営を実践しました。

経営統合の試み

髙島屋との経営統合についても取り組みました。2008年には両社の経営企画担当者同士が情報交換をし、本格的な協議がスタート。しかし、両社の人事制度や戦略の違いから統合は困難を極め、最終的には2010年に経営統合の中止が発表されました。それでも、両者の資本提携は続けられました。

神戸阪急とその後の影響

神戸市のハーバーランドにある神戸阪急でも社長を兼任していましたが、この店舗は一度も黒字化することがありませんでした。最終的には阪急百貨店に統合される形で閉店することとなりました。椙岡は残されたそごう神戸店を活用し、新たな地域密着型店舗「神戸阪急」へと発展させることに尽力しました。

孤独な経営者

椙岡は、マスコミとの接触は最小限にし、業界内の派閥に囚われることなく顧客目線を貫いた経営者でした。2015年に経営計画の目処を立てた際、会長職を退くことを決意し、その後は私生活を楽しむ選択をしました。

余生を穏やかに過ごす中、2021年11月5日、誤嚥性肺炎により81歳でこの世を去りました。彼自身の意向により、葬儀等も執り行われることはありませんでした。

私生活

彼の日常には早朝の1時間のウォーキングがあり、愛犬と共に過ごすことが日課となっていました。その姿には多くの人々が感銘を受けたことでしょう。普段の歩行でも、一日に15000歩も歩くことを心掛け、健康維持を大切にしていました。

椙岡俊一の経歴と経営スタイルは、百貨店業界における新たな変革の象徴と言えるでしょう。彼の行動や哲学は、後世にわたって多くのビジネスパーソンに影響を与え続けることでしょう。

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