椿組

椿組（つばきぐみ）

東京都新宿を中心に活動を展開する日本の劇団。俳優、演出家、声優として多方面で活躍する外波山文明が主宰および座長を務めています。

劇団の歩み

椿組の歴史は、外波山文明が1971年5月に旗揚げした「はみだし劇場」に遡ります。この前身劇団として、1985年には新宿花園神社での夏の野外劇初公演を実現しました。その後、1990年に劇団名を「椿組」へと変更。改名後も一部公演では「はみだし劇場」の名義も使用していましたが、1996年の作品『天守物語-夜叉が池篇』をもって、「はみだし劇場」としての活動は幕を閉じました。

外波山が名称変更に踏み切った背景には、特定のメンバーによる活動に感じていた閉塞感がありました。外部からの作家や演出家を招くなど、より自由な形式、一種のプロデュース公演に近い体制を目指す意図があったと語られています。

舞台芸術の特徴と活動

創設以来、椿組は特に野外劇や時代劇を中心に、「毒」のある視点から社会や人間の内面に切り込む芝居創りを追求してきました。野外劇に加えて、劇場での公演も意欲的に行っています。その舞台は、高い芸術性と、舞台美術に凝らされた仕掛けのダイナミズム、そして独特の演出が生み出す予測不能なラストシーンによって観客を惹きつけます。

公演は主に春の（新）春公演と夏の野外劇を中心に、年間2〜3回実施されています。近年の脚本の傾向としては、2021年以降の作品に見られるように、実際の事件を題材としたもの（例：『「シャケと軍手」- 秋田児童連続殺害事件 -』）、労働現場における人々の生き様やその周辺に焦点を当てたルポルタージュ的な作品（例：『貫く閃光、彼方へ』、『まっくらやみ・女の筑豊（やま）』）、戦争の悲惨さを訴えかける作品（例：『戦争童話集』他）、そして時代劇（例：『夏祭・花之井哀歌』、『丹下左膳’23』）など、多岐にわたるテーマが扱われています。

コロナ禍と新たな試み

新型コロナウイルスのパンデミックは、椿組の公演活動にも大きな影響を与えました。2020年に予定されていた野外劇『貫く閃光、彼方へ』は2021年に延期され、2022年新春公演『ガス灯は檸檬のにほひ』は2024年まで延期。また、2022年夏の野外劇『夏祭・花之井哀歌』は、初日わずか1回の上演で中止を余儀なくされました。

このような困難な状況を乗り越えるため、2022年秋の公演『潜水艦とクジラと・・・』や2023年春公演『まっくらやみ・女の筑豊（やま）』の開催にあたっては、クラウドファンディングを実施して支援を呼びかけました。その結果、目標額を大きく上回る支援が集まり、これらの公演は無事、千琫楽まで上演を完遂することができました。

花園神社野外劇の歴史と終焉

外波山座長は「自分達の遊び場は自分たちで作る。これが私のモットーで、花園神社で38年やってきました。」と語るように、新宿花園神社は椿組にとって長年にわたり活動の「聖地」でした。2023年時点で38年目を迎えていたこの野外劇ですが、劇団員は家族同然の存在であり、共にテントを建て、寝食を共にすることから生まれる温かさを大切にしてきました。

しかし、2024年6月22日、座長の外波山文明は自身のSNSで、39回目となるこの年の公演をもって花園神社での野外劇を終了することを発表しました。「39年目、サンキューありがとう、で区切りを付けることにしました」とその理由を述べ、長きにわたり活動の場を提供してくれた花園神社への感謝の言葉を綴りました。最終公演の演目となった「かなかぬち」は、小説家・中上健次と外波山が共に33歳だった1979年に意気投合して創作した唯一の戯曲であり、今回の公演は8回目となる上演でした。

新生・椿組への展望

長年の拠点であった花園神社での野外劇に幕を下ろした椿組は、2025年1月1日、公式SNSを通じて新たなスタートを切ることを発表しました。2025年4月からは、劇団員による共同プロデュース形式の「新生・椿組」として活動を展開していく予定です。

受賞歴

第3回花園賞（2005年）
第50回紀伊國屋演劇賞特別賞（2015年）- 特に「贋作幕末太陽傳」に至る30年にわたる花園神社公演に携わった舞台監督グループが、長年の成果に対して受賞。

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