楊令伝

『楊令伝』について

『楊令伝』（ようれいでん）は、歴史小説家北方謙三による作品で、2006年10月から2010年6月まで集英社の『小説すばる』に連載され、多くの読者に支持されました。本作は、先行作品『水滸伝』の続編であり、全15巻からなる単行本および文庫版が刊行されています。また、この作品は第65回毎日出版文化賞特別賞を受賞しており、その評価は高いものです。

物語の概要

『水滸伝』の物語は、官軍に敗れた梁山泊が新たな頭領、楊令を迎えて再起するところから始まります。生き残った百八星とその子供たちは理想の国を築こうと奮闘します。物語では、遼族の滅亡や金の興隆、方臘の乱といった実際の歴史的背景が色濃く反映されており、原典を基にしながらも、北方の独自の視点が生かされています。著者はこの作品を「反権力をテーマにした『水滸伝』の夢物語に対し、現実に国家を構築していく物語」と位置付けており、構成は複雑ながらも非常に魅力的です。

物語の中盤では、梁山泊が新興権力を築こうとし、逆に権力側となる様子が描かれます。楊令は新たな国家建設の道を模索し、様々な苦悩を伴いながら梁山泊を導いていく姿は多くの読者を惹きつけます。このグランドスケールの物語は、最終的に完結編である『岳飛伝』へとつながります。

登場人物と拠点

登場人物たちは、梁山泊の拠点である河北の新たな軍事基地を拠点に新しい国家を目指して活動します。それぞれの人物が持つ個性や背景が物語に深みを与えており、読者は彼らの成長や葛藤を通じて物語に引き込まれていきます。

新たな梁山泊

新しい梁山泊は、前作の戦いの後に流浪していた呼延灼や張清、史進などの残党たちが集まり、黄河沿岸に築かれました。ここでは、意思決定機関が機能し、様々な戦略が考案されていきます。特に、宋江から託された「替天旗」が掲げられた聚義庁は、その象徴的な役割を果たしています。

洞庭山とその他の拠点

物語の舞台には、洞庭山や洞宮山、沙門島、楡柳荘、大城、双頭山など、さまざまな拠点があり、ここで新兵たちが訓練を受けたり、資源の管理が行われたりします。それぞれの拠点が持つ戦略的役割が、物語を進めるうえで重要な要素となっています。

書籍情報

『楊令伝』は全15巻から成り、各巻は以下のように刊行されました：

• - 第一巻：玄旗の章（2007年4月26日発行）
• - 第二巻：辺烽の章（2007年7月26日発行）
• - 第三巻：盤紆の章（2007年10月26日発行）
• - 第四巻：雷霆の章（2008年1月25日発行）
• - 第五巻：猩紅の章（2008年4月25日発行）
• - 第六巻：徂征の章（2008年7月25日発行）
• - 第七巻：驍騰の章（2008年10月24日発行）
• - 第八巻：箭激の章（2009年1月26日発行）
• - 第九巻：遙光の章（2009年4月24日発行）
• - 第十巻：坡陀の章（2009年7月24日発行）
• - 第十一巻：傾暉の章（2009年10月26日発行）
• - 第十二巻：九天の章（2010年1月30日発行）
• - 第十三巻：青冥の章（2010年4月26日発行）
• - 第十四巻：星歳の章（2010年7月30日発行）
• - 第十五巻：天穹の章（2010年10月26日発行）

北方謙三が描くこの壮大な物語は、時代背景と人間ドラマが交錯するなかで、新たな国家の誕生とその苦悩を深く描き出しています。読者は、登場人物たちの熱き思いとともに、理想を追い求める姿を目の当たりにすることでしょう。

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