楊式太極拳

楊式太極拳の概要

楊式太極拳（ようしきたいきょくけん）は、中国の武道の一派であり、伝統的な太極拳の中でも最も代表的な流派の一つです。この流派は河南省に住む武術家、陳長興が陳家太極拳を基にし、独自の工夫を加えながら創始したとされています。

起源と歴史

楊式太極拳の起源は、陳家太極拳と密接に関連しています。陳家太極拳は「太極拳」という名を持つものの、実際には通臂拳から派生した炮捶という拳術です。この流派を学んだ楊露禅は、後に自身のスタイルを確立し、楊家太極拳として広めました。特に注目されるのは、楊露禅の二代目にあたる楊澄甫が編成した「85式」であり、これが現代の「楊式太極拳」として知られています。

楊露禅の業績

楊露禅は、実戦においても優れた技術を持ち、「楊無敵」と呼ばれるほどの評判を得ていました。そのため、多くの清朝の王族や貴族が彼から技を学びました。楊式太極拳には「綿拳」や「化拳」といった柔らかな動きが特徴的で、優雅さと力強さを兼ね備えています。

楊露禅の技術は、子孫たちによっても改良され、現在も続く伝統として受け継がれています。主要な理論書には、楊班侯が記した『太極拳九訣』や楊澄甫による『太極拳老譜三十二解』があります。

楊一族の強さの秘密

楊式太極拳がこれほどまでに強いとされるのには、秘密裏に伝わる独自の技術や拳術の存在があります。楊一族はその技を家伝の秘拳として特別に練習し、それを他流派と共有することはありませんでした。その結果、文人向けの比較的柔らかい套路が増え、楊式の真髄が他に及ばないものとなったという説があります。

デザインとスタイル

楊式太極拳には、精緻な動作を含む特異な套路も存在しますが、最も普及しているのは楊澄甫が編成した「大架式」と呼ばれるスタイルです。このスタイルは、緩やかで伸びやかな動きが特徴であり、発勁も暗勁を用いるため、老若男女を問わず容易に習得できます。さらに、楊式太極拳は健康法としても認知されており、簡化二十四式と呼ばれる運動プログラムはこの流派を基盤に構成されています。

主要な套路

楊式太極拳の主要な套路には、創始者の楊露禅が武当太極拳を基に編成した108式、そしてその孫である楊澄甫によって改変された85式があります。85式は今や制定拳の24式や88式の基盤ともなり、古式楊式太極拳として他の流派にも伝えられています。

このように、楊式太極拳はただの武道にとどまらず、文化や健康の一部としても重要な役割を果たしているのです。

もう一度検索