楠勝平

楠勝平（くすのき しょうへい）

楠勝平は、1944年1月17日に東京都荒川区で生まれ、1974年3月15日に30歳という若さでこの世を去った漫画家です。本名は酒井勝宏といいます。彼は、市井の人々の生活や感情を繊細に捉え、劇画というスタイルで表現しました。その作品は、時にユーモラスであり、時に哀愁を帯び、読者の心を深く揺さぶります。

生い立ちと漫画家への道

中学生の頃から、同級生の雨森豪、平野あきらと共に漫画を描き始めました。1957年、近所の貸本屋で長井勝一を紹介されたことがきっかけで、三洋社に出入りするようになります。そこで渡辺美千太郎のアシスタントとして修行を積み、1960年に『剣豪画集』（三洋社）に掲載された「必殺奥義」で貸本漫画家としてデビューを果たしました。その後、『忍法秘話』（三洋社）や『群狼』（第一プロ）などの貸本短編誌に作品を発表し、辰巳ヨシヒロらと親交を深めます。さらに白土三平のアシスタントとして働きながら、『ガロ』や『COM』といった雑誌で作品を発表し、高い評価を得ました。

短い生涯と作品

楠勝平は、中学生の頃から心臓弁膜症を患っており、それが悪化し、1974年に30歳で亡くなりました。彼の才能を惜しんだ長井勝一は、「白土三平さんのただひとりの弟子なんだけど若くして亡くなったからね…まさしく夭逝の天才だよ…もう少し生きててもらいたかった」と述べています。

彼の作品は、長らく入手が困難でしたが、2001年2月に青林工藝舎から600ページにも及ぶ作品集『彩雪に舞う…』が限定3000部で刊行されました。また、いしいひさいちは、自身の生涯ベスト単行本に『おせん』（青林堂）を挙げています。2021年9月には、山岸凉子選定による作品集がちくま文庫から刊行され、山岸は楠作品を「メジャーで普遍的な世界を描いている」と評しました。

主な作品集

ガロ別冊「楠勝平特集」（1970年、青林堂）※絶版
楠勝平作品集（1975年、青林堂）※絶版
おせん（青林傑作シリーズ第18巻）（1978年、青林堂）※絶版
彩雪に舞う…（2001年、青林工藝舎）※絶版
楠勝平コレクションー山岸凉子と読む（2021年、ちくま文庫）

作品年表（一部）

1960年：「必殺奥義」（剣豪画集-2、三洋社）、「剣と」（忍風別冊-3、三洋社）
1963年：「毒」（忍法秘話-1、青林堂）、「内職忍者」（忍法秘話-2）、「三人の詐欺師」（忍法秘話-3）、「肥」（忍法秘話-4）
1964年：「赤い雨」（忍法秘話-5）、「石塔」（忍法秘話-6）、「しょうばいしょうばい」（忍法秘話-8）、「ほとけの善兵衛さん」（忍法秘話-8）、「稲荷繁盛記」（忍法秘話-9）、「地獄」（忍法秘話-10）、「遭難」（忍法秘話-11）、「紅蓮の罠」（忍法秘話-12）、「馬鹿な話」（忍法秘話-13）、「仙丸」（ガロ、10月号～1965年 6月号、青林堂）
1965年：「仇 第一話 永遠の演技」（忍法秘話-15）、「仇 第二話 脱藩」（忍法秘話-16）
1966年:「仇」（群狼-１、第一プロ）、「名刀」（ガロ、10月号）、「いざかや」（ガロ、11月号）、「おせん」（ガロ、12月号）
1967年:「殿さまとざらざらした味」（ガロ、1月号）、「島抜け」（群狼-2）、「喧嘩」（ガロ、2月号）、「鎧」（ガロ、3月号）、「冷たい涙」（ガロ、5月号）、「参加」（ガロ、6月号）、「蛸」（破、東京トップ社）、「どろ棒とこん棒」（ガロ、7月号）、「茎」（ガロ、9月号～10月号）、「赤水」（ガロ、12月号～1968年1月号）
1968年:「出張」（青春 - No.38、第一プロ）、「臨時ニュース」（ガロ、5月号）
1969年:「チェッ」（ガロ、7月号）、「よるが恐い」（COM、8月号、虫プロ商事）、「石匠」（原作・冬木良）（ガロ、10月号）、「地獄」（COM、12月号～1970年 1月号）
1970年:「盗っ人」（ガロ、1月号）、「空にて…」（COM、2月号）、「達磨さん達磨さん 睨めっこしましょう 笑うと負けよ アップップ!」（COM、4月号）、「大部屋」（ガロ、5月号）、「風と風」（サンデー毎日増刊「劇画とマンガ」第2集、毎日新聞社）、「暮六ツ」（ガロ、9月号）、「ふじが咲いた」（ガロ、10月号）、「めくらのはなし」（わかもの、わかもの社）
1971年:「はあーはあーはあー」（COM、1月号）、「中床清吉」（漫画フレッシュ、1月号、双葉社）、「あらさのさぁー」（ガロ、2月号）、「ちょうちん」（わかもの、2月号）、「まめ」（ガロ、4月号）、「梶又衛門」（ガロ、6月号）、「赦免船はやってきた!」（長編コミック傑作集、7月21日号、芳文社）、「ぼろぼろぼろ」（ガロ、9月号～1972年 6月号）、「やすべえ」（COM、11月号）、「蝶を見た!」（原作・岩崎稔）（長編コミック傑作集、9月22日号）、「ゴセの流れ」（長編コミック傑作集、12月15日号）
1972年:「ぐれん」（漫画ボン、2月号、少年画報社）、「錦を飾れ」（長編コミック傑作集、2月16日号）、「とも……」（長編コミック傑作集、4月19日号）、「しまい風呂」（ヤングコミック、7月26日号、少年画報社）、「ふたり」（漫画ボン、10月増刊号）、「あね」（漫画ボン）、「おたふく殿」
1973年:「山ちゃんが死んだとさ」（ガロ、1月号）、「ある男」（ガロ、2月号）、「彩雪に舞う…」（ガロ、3月号）、「閃影」（漫画ボン、4月号）、「鬼の恋」（ガロ、5月号）、「とし」（ガロ、6月号）、「初夏のひびき」（漫画ボン、8月号）、「毒」（ガロ、10月号）、「師匠」

師匠

渡辺美千太郎
白土三平

脚注

外部リンク
楠勝平のぺーじ - 非公式ファンサイト

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