楽天地 (大阪)

大阪のエンターテイメントの殿堂「楽天地」：大正時代の夢の跡

楽天地は、1914年（大正3年）から1930年（昭和5年）にかけて、大阪市南区難波新地（現在の中央区千日前）に存在した、劇場、演芸場、そして様々なレジャー施設が集まる一大エンターテイメント施設でした。「新世界」や「市岡パラダイス」と並び、大正時代の大阪を代表する三大娯楽施設の一つとして、多くの人々に愛されました。

ミナミの復興と楽天地誕生の背景

1912年（明治45年）に発生した「ミナミの大火」は、難波新地一帯を焼き尽くし、街の賑わいを大きく損ないました。さらに、都市計画道路である千日前通の建設により、千日前が分断されることになり、復興への道のりは困難を極めました。

この状況を憂慮した南海鉄道の社長、大塚惟明は、ミナミの復興と人々に再び賑わいを取り戻すため、大規模な興行場の開設を構想します。大塚の発起により、1913年（大正2年）に「千日土地建物株式会社」が設立され、翌1914年（大正3年）、「楽天地」が華々しく開業しました。

楽天地の壮大なスケールと多様な魅力

市電千日前停留所の前に建設された楽天地は、約4,409平方メートルの敷地に、円形ドームが特徴的な地下1階、地上3階建ての建物でした。建物全体はイルミネーションで彩られ、その煌びやかな外観は人々を魅了しました。

施設内には、展望塔「登仙閣」をはじめ、「蓬莱宮」「朝暘殿」「月下殿」といった劇場や、メリーゴーランドなど276もの施設が軒を連ねていました。地下には水族館やスケート場まで設けられ、まさに一日中楽しめる夢のような空間でした。

三つの劇場が織りなす多彩なエンターテイメント

約1,600人を収容できる大劇場「蓬莱宮」では、映画、新派劇、少女歌劇、翻訳劇など、多彩な演目が上演されました。蓬莱宮の両脇には、200～300人収容の小劇場があり、東側の「朝暘殿」では落語、漫才、色物などが、西側の「月下殿」では少女琵琶歌劇などが上演され、各劇場は一日三回公演が行われ、楽天地の入場料のみで気軽に観覧できました。

経営の変化と閉鎖、そしてその後の歴史

鉄道会社による興行場経営は当初苦戦し、1917年（大正6年）に映画館「三友倶楽部」を経営していた山川吉太郎に経営が委ねられます。しかし、1919年（大正8年）には再び直営に戻り、1921年（大正10年）には松竹の白井松次郎社長が株式を肩代わりしたことで、松竹の直営となります。

しかし、施設の老朽化が進み、1928年（昭和3年）には大阪府建築条例に基づき、年末までの解体命令を受けます。そして、1930年（昭和5年）に楽天地は閉鎖され、解体されました。跡地には、1932年（昭和7年）に「大阪歌舞伎座」が開業し、新たな歴史を刻み始めました。

楽天地は短命に終わりましたが、大正時代の大阪における娯楽の象徴として、多くの人々の記憶に刻まれています。その跡地には、現在も大阪歌舞伎座が建ち、かつての賑わいを偲ばせています。

関連項目

* 日本ドリーム観光（楽天地の運営会社・千日土地建物の後身企業）

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