榊原清則

榊原清則：日本の経営学界に多大な貢献をした教育者と研究者

榊原清則氏(1949年8月23日-2021年6月26日)は、日本の経営学界において卓越した功績を残した学者です。慶應義塾大学名誉教授、中央大学ビジネススクール教授などを歴任し、数々の大学で後進の育成に尽力しました。北海道小樽市出身の榊原氏は、電気通信大学卒業後、一橋大学大学院で学び、その後、MIT、ハーバード大学、ミシガン大学などで研究員や客員准教授として研鑽を積みました。

1990年には一橋大学商学部教授に就任。1992年にはロンドン・ビジネス・スクールへ移り、准教授として国際的な研究活動にも携わりました。1996年には慶應義塾大学総合政策学部教授に就任すると同時に、一橋大学より博士（商学）の学位を取得しました。その学位論文は「日本企業の研究開発マネジメント」というテーマで、日本の企業研究開発における重要な知見を提供しました。

彼の研究は多岐に渡り、特に「企業ドメイン」という概念に関する研究は、企業の活動範囲や生存戦略を考察する上で極めて重要な貢献をしました。近年は、半導体産業を中心としたハイテク産業における技術経営（MOT）の研究に注力し、数多くの論文や著書を発表しました。

指導者として、榊原氏は多くの著名な経営学者やベンチャー起業家を育成したことで知られています。彼の指導スタイルは、近年流行の「褒める教育」とは対照的に、学生や院生を徹底的に鍛え上げるものでした。しかし、それは闇雲な批判ではなく、個々の学生の潜在能力を最大限に引き出すことを目的とした、きめ細やかな指導でした。教え子たちへの深い愛情と情熱は、彼の指導スタイルの根幹を成すものでした。

一橋大学時代には、後に著名な経営学者や実業家となる多くの学生を指導。慶應義塾大学でも、ネットプライスドットコムの佐藤輝英氏、フラクタリストの田中祐介氏、NPO法人フローレンスの駒崎弘樹氏など、多くのベンチャー起業家や社会起業家を輩出しました。中央大学においても、ハウスコムの田村穂社長など、多くの成功者を育成しました。

彼の業績は、学術論文や著書にも見ることができます。代表的な著書として、『日本企業の研究開発マネジメント―“組織内同形化”とその超克』『企業ドメインの戦略論―構想の大きな会社とは』『アフターマーケット戦略―コモディティ化を防ぐコマツのソリューション・ビジネス』『イノベーションの収益化―技術経営の課題と分析』など、多くの書籍が経営学の分野で高く評価されています。これらの著作は、日本の企業戦略やイノベーション、技術経営に関する深い洞察を提供しています。

故郷である小樽市への深い愛着も知られており、その地元愛は彼の生き方全体に影響を与えていたと言えます。

榊原清則氏の功績は、日本の経営学界、ひいては日本の経済社会の発展に多大な貢献を果たしました。彼の指導によって育成された人材は、現在も日本の各界で活躍しており、彼の影響力は今後も長く続くでしょう。

もう一度検索