構造体

プログラミングにおける構造体とは

構造体とは、プログラミング言語におけるデータ型の一つで、複数の値をまとめて格納できる機能を持つものです。これは、単一の値を格納する変数とは異なり、関連する複数のデータを一つの単位として扱うことを可能にします。構造体の各構成要素は「メンバー」や「フィールド」と呼ばれ、それぞれに名前が付けられています。

配列との違い

構造体と似たデータ型として配列がありますが、両者には重要な違いがあります。配列は、同じ型の要素を順番に格納するデータ構造であるのに対し、構造体は異なる型の要素を混在させることができます。例えば、ある人物の情報を構造体として表現する場合、名前（文字列）、年齢（整数）、身長（浮動小数点数）など、異なる型のデータを一つの構造体としてまとめることができます。これにより、関連性の高いデータを一つのまとまりとして扱いやすくなります。

様々な言語での構造体

構造体は、多くのプログラミング言語でサポートされており、その実現方法は言語によって異なります。

C/C++: `struct`キーワードを使って構造体を定義します。C++では、構造体はクラスとほぼ同じ機能を持つことができ、メンバー関数を持つことや派生型の定義も可能です。ただし、デフォルトのアクセシビリティが`public`である点がクラスとは異なります。
Java: `struct`キーワードは存在せず、`class`キーワードを用いてクラスとして構造体に相当するデータ構造を実現します。Java 16からはイミュータブルなレコードクラスが導入されています。
Kotlin: `data class`構文により、データを保持するためだけのクラスである「データクラス」を定義できます。データクラスはミュータブルであり、コピー関数が用意されています。
C#: `struct`キーワードを使って構造体を定義します。構造体は値型であり、軽量なオブジェクトを定義するのに適しています。一方、クラスは参照型であり、ヒープ割り当てが必要です。C#では、構造体は継承をサポートしません。
VB.NET: `Structure`キーワードを使って構造体を定義します。C#の構造体と同様の機能を提供します。
Swift: `struct`キーワードを使って構造体を定義します。C#と同様に値型であり、クラスは参照型です。Swiftの構造体はObjective-Cのクラスと相互運用できません。

構造体の応用

構造体は、オブジェクト指向プログラミングを模倣するためにも使用されることがあります。C言語などのオブジェクト指向言語ではない言語では、構造体を使ってオブジェクトのようなデータ構造を定義し、関数ポインタを組み込むことでメソッドのように振る舞わせることができます。また、API設計において、構造体のポインタを不透明な型として扱い、オブジェクトの詳細を隠蔽するテクニックも用いられます。これにより、APIの内部実装を変更しても、APIの利用者側には影響を与えない柔軟な設計が可能となります。

C言語での構造体例

c
struct Point {
int x;
int y;
};

struct Point createPoint(int x, int y) {
struct Point p = malloc(sizeof(struct Point));
if (p != NULL) {
p->x = x;
p->y = y;
}
return p;
}

void destroyPoint(struct Point* p) {
free(p);
}


この例では、構造体`Point`が定義されており、`createPoint`関数で動的に確保された構造体のポインタが返却されます。`destroyPoint`関数でメモリが解放されます。構造体のポインタをハンドルとして利用し、オブジェクト指向のようなインターフェースを実現できます。

C#での構造体例

csharp
public struct Point
{
public int X { get; }
public int Y { get; }

public Point(int x, int y)
{
X = x;
Y = y;
}

public override string ToString(){
return $"({X},{Y})";
}
}

// 利用例
Point p = new Point(10, 20);
Console.WriteLine(p.ToString()); // 出力: (10,20)


C#では、`struct`キーワードを使って構造体を定義します。構造体は値型であるため、変数の代入時には値がコピーされます。C#の構造体は、引数付きコンストラクタを定義することができますが、引数のないコンストラクタ（デフォルトコンストラクタ）をユーザー定義することはできません（C# 10.0以降は可能になりました）。また、フィールドの宣言時に初期化することはできません。

メモリレイアウト

構造体のメンバーは、メモリ上で連続して配置されるとは限りません。コンパイラは、プロセッサアーキテクチャに合わせてアクセス効率が最適になるように、パディングと呼ばれる無名の詰め物を挿入することがあります。このパディングは、シリアライズや相互運用において問題になる場合があるため、アライメントを明示的に調整する機能が提供されることがあります。アライメントされていないアドレスに構造体メンバーが配置された場合、バスエラーが発生する可能性もあります。

構造体は、プログラミングにおいて不可欠なデータ型であり、さまざまな場面で活用されています。その特性を理解し、適切に使用することが、効率的で安全なプログラムを開発するために重要です。

もう一度検索