槌田敦

槌田敦：物理学者と環境経済学者

概要

槌田敦（つちだ あつし）は、1933年5月17日生まれの日本の物理学者・環境経済学者です。東京に生まれ、東京都立大学の理学部化学科を卒業後、東京大学大学院物理課程を中途退学。その後、理化学研究所の研究員としての経歴を経て、名城大学や高千穂大学の教授として活動しました。彼の家族には、父の槌田龍太郎も化学者であり、弟の槌田劭も活動的な研究者です。

研究と思想

槌田は環境問題を開放系熱力学を用いて分析し、「槌田エントロピー理論」を提唱しています。彼はこの理論を通じてエネルギーの問題、廃棄物処理、リサイクルの重要性を強調し、1970年代初頭から反核・反原発の立場を取っています。さらに、核融合技術の開発にも反対しており、彼の意見は「CO2温暖化脅威説」が世紀の暴論との姿勢で、気温上昇が先行しているとの主張をしています。

彼の意見は日本物理学会誌に掲載されたものの、査読を経た科学論文とは認められていません。日本気象学会の査読でも根拠不足を指摘され、彼の主張は科学界で広く受け入れられていないため、専門家から反論を受けています。これにより、槌田の意見はしばしば「詭弁」との批判にさらされています。

法的な争い

槌田は東京大学や気候学者、日本気象学会に対して計三回の民事訴訟を起こしました。第一の訴訟では、東京大学が発行した『地球温暖化懐疑論批判』によって、彼の名誉が毀損されたと主張し、出版物の差し止めを求めましたが、東京地裁は彼の請求を棄却しました。

さらには、日本気象学会に対しても、論文の掲載を拒否されたことから損害賠償を求める訴訟を行いましたが、2010年には請求が棄却されました。その後も日本気象学会に対する新たな訴訟を起こしましたが、やはり請求は棄却され、法的な対決はいずれのケースでも彼の敗訴となりました。こうした訴訟の背景には、彼の研究が主流となる科学界での評価が得られなかった事情があると言えます。

研究テーマ

槌田は1976年以降、資源物理学を提案し、地球のエネルギー収支から資源の条件を探り、生物の生存上限を定義していますが、それもまた広く認識されているわけではありません。彼の論文は査読対象外の場に寄稿され、専門的な裏付けが乏しいことが問題視されています。その中でも、定常開放系の理論をもとにした研究は彼のライフワークとなっており、独特の考え方を提示しています。

著書

槌田の著作には『石油と原子力に未来はあるか 資源物理の考えかた』や『エネルギー 未来への透視図』など、多様なテーマにわたる書籍があります。彼の著作は環境問題に対する独自の視点を表現しており、温暖化問題をはじめとする現代の重要課題に対する批判的考察が見られます。彼の活動と著作は、環境問題への関心を引き起こし、多くの読者に影響を与えています。

まとめ

槌田敦は、環境問題に対する独自の解析を持ち、物理学に基づくアプローチでそれを探求し続ける存在です。反核・反原発の立場からの活動や、法的な争いを通じて彼の意見が専門家の間で広く受け入れられるには至っていません。しかし、その研究や主張は、環境問題を考察する上での一つの観点を提供しているといえるでしょう。

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