樅ノ木は残った (NHK大河ドラマ)

『樅ノ木は残った』

『樅ノ木は残った』（もみのきはのこった）は、1970年に放送されたNHKの大河ドラマ第8作目で全52回から成り立っています。この作品は、江戸時代前期の4代将軍である徳川家綱の治世中に発生した伊達騒動を基にしており、原作は著名な作家・山本周五郎の同名小説です。『太閤記』の茂木草介が脚本を担当し、吉田直哉が演出を務めるコンビが手掛けたこのドラマは、戦争のない時代における人間の争いの本質とその悲しさを描写しています。

企画・制作

本作品は、「悪役」として伝えられてきた原田甲斐を、藩を思いやった名臣として再評価しようとした点が特徴的です。この新しい視点を取り入れたのは、演出の吉田直哉で、彼は甲斐の心の闇を描くために独自のストーリーを加え、青春時代の恋の悲劇を描きました。このオリジナルストーリーは、視聴者に新たな深みをもたらしました。

物語は、甲斐が若い頃の恋人・たよとの関係から始まり、彼の心の葛藤を丁寧に描いていきます。第14回以降は原作に基づく内容が進行し、甲斐が自らの名誉のために生きる様子が浮き彫りになります。特に、彼が汚名を甘受する理由には、女性への贖罪意識が影響しており、その内面が複雑に絡み合っています。

この作品で新たに採用された制作スタイルも注目されます。前作『天と地と』に続き、演出に複数のディレクターを起用したものの、全体の統括をするチーフディレクターのもとにセカンドやサードを配置し、若手ディレクターが責任を持ちつつ成長できる体制が整えられました。これにより、以降の大河ドラマのスタンダードが形成されていきました。

また、本作は地域との連携を重視し、仙台でのロケが初めて本格的に行われました。観光振興にも寄与し、地元の樅の木林では、一斉に木々が刈り取られる中、ただ一本が残されたエピソードが語り継がれています。このようにして、視聴者は物語を体感し、地元に対する愛着も感じられるようになりました。

音楽と映像

オープニングは、風に揺れる竹林から能面が現れ、様々なアングルから撮影された美しい映像で構成されています。この撮影は、ヘリコプターを用いて行われ、文化財である能面の撮影においては、所蔵者が直接スタジオに持ち込むほどの配慮がされていました。これにより、作品の美術的な側面が際立ちました。

反響と評価

視聴率の面でも初回は27.6%を記録し、最終的には21.0%の平均視聴率を確保しました。内容の重厚さや音楽もあいまって、一部の視聴者からは「暗い」との意見もありましたが、全体としては丹念に描かれた伊達家のお家騒動は多くのファンに支持され、初期の大河ドラマの傑作として評価されています。

登場人物

主要キャラクターに原田甲斐（平幹二朗）がいます。彼は以前の作品で描かれていたような悪役ではなく、藩を守るために尽力した名臣として描かれています。また、宇乃（吉永小百合）は彼の恋人として、甲斐との関係を通して物語が進展します。たよ（栗原小巻）、甲斐の母や妻、さらには敵役としての伊達家の人々も重要な役割を果たします。

結論

『樅ノ木は残った』は、人間の内面的な葛藤や家族の絆と運命を描くことに成功した作品であり、その後の大河ドラマへの影響も大きいものがあります。映像が残る今なお、多くの人々に愛され続けるこのドラマは、歴史的な価値も含めて、視聴者に深い感動を与えたことでしょう。

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