権兵衛狸

権兵衛狸（ごんべいだぬき）

概要

権兵衛狸は、日本の古典落語の演目の一つで、上方落語では「とんとん権兵衛」として知られています。その起源は、正徳2年に出版された笑話本『笑眉』の中に収められた一遍からの派生として発展しました。元々は江戸落語として演じられましたが、後に上方落語でも広まり、多くの噺家によって愛されてきました。特に、三遊亭金馬や立川談志といった著名な噺家の持ちネタとして親しまれています。ただし、主人公の権兵衛が理髪師として描かれることもあれば、別の形で演じられることもあります。

あらすじ

物語は、ある田舎町で理髪店を営む権兵衛のところから始まります。彼は夜になると、突然自分の名前を呼ぶ声が聞こえ、その後に雨戸を叩く音が響くことに気づきます。権兵衛はこの出来事に困惑し、誰が夜中に自分を呼んでいるのか心当たりがありません。どれだけ待っても扉を開けても誰もいないことから、次第に彼はこれは狸の仕業ではないかと疑うようになります。

狸は首を突っ込んで叩くという古い言い伝えがあるため、権兵衛は考えました。「今夜もあの声がしたら、狸を捕まえてやろう！」と決意します。ある晩、彼は予想通り自分の名前が呼ばれるのを待ち受けて、雨戸を叩く音がした際に思い切って扉を開けました。すると、何とそこに狸が飛び込んできたのです。権兵衛は狸を捕まえると、「お前を狸汁にしてやるぞ！」と大声で脅しますが、結局のところ、狸の頭をきれいに剃ってやるだけで許してやることにしました。

そして彼は、次に同じことをしたら本当に狸汁にしてしまうと警告し、狸を解放しました。ところが、数日後またしても同じように、権兵衛の名前を呼ぶ声と叩かれる音が聞こえてきます。「またあの狸が来たのか？」と権兵衛は不満を抱きながら雨戸を開けると、案の定そこには狸が待っていました。狸は権兵衛を見上げて言うのです。「今度は髭を剃って欲しいんです。」

この最後のセリフがポイントで、権兵衛の狸との愉快なやり取りが、落語の面白さを引き立てています。権兵衛狸のストーリーは、単なる喜劇に留まらず、狸の知恵や権兵衛の心境の変化を面白おかしく描いており、観客を楽しませる魅力にあふれています。権兵衛と狸のユーモラスなやり取りは、古典落語の中でも特に印象深いものの一つとなっています。

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