権限

権限とは

権限（けんげん、英: Authority）とは、特定の事柄に対する権利やその行使の範囲を指します。主に行政法では、国や公共団体の機関がその業務を地域や内容、担当者によって制限された範囲で取り扱うことを意味します。一方、民法の文脈では、この権限は一般的に代理の範囲を示すことが多いです。

行政法における権限の委任

権限の委任とは、行政庁が自らの権限の一部を他の機関に譲渡し、その機関がその権限を行使できるようにすることです。この場合、本来の権限を持つ行政庁は、その権限を失い、受任した機関が自身の名義で権限を行使します。ただし、上級の行政庁は、下級の行政庁に権限を委任した場合でも、引き続き監督する権利を持っています。このように権限を委任するには、法令に基づく根拠が必要であり、権限の委任は限定的です。

権限の委任の具体例

1. 地方自治法（第153条、第167条、第171条）によれば、市町村長や都道府県知事は、副市長や教育委員会などの他の行政機関にその権限を委任できます。この場合、委任を受けた機関は、自身の名で事務を執行し、責任を持ちます。

2. 地方教育行政の組織及び運営に関する法律（第25条）に基づき、教育委員会は教育長や学校の職員に権限を委任できる仕組みです。こちらも同じく、委任をした側は権限を失い、受任者が自らの名前で行動します。

例えば、市長が道路管理者の権限を建設事務所長に委任し、その結果、建設事務所長が道路占用許可の不許可処分を行った場合、住民は市長に対し不服申立てができます。ただし、市長は既にこの権限を委任しているため、建設事務所長の行為について事前に介入することはできません。

権限の代理

権限の代理では、権限の存在自体は変わらず、その行使は代理人の名のもとで行われます。この代理には、授権を基に関係を築く「授権代理」と、法律上の条件が満たされた場合に自動的に発生する「法定代理」が存在します。

法定代理には様々な形態がある

• - 狭義の法定代理：法律で指定された代理機関は、当然に権限を行使します。
• - 指定代理：あらかじめ被代理機関が代理を担う機関を指定する場合です。法的根拠は不要です。
• - 授権代理：一部の権限が授けられる場合です。この場合、権限の移動はありませんが、法律に基づく根拠は不要ともされています。

専決と代決（内部委任）

行政機関は、その権限に基づき、特定の事務について補助機関に決定を委ねることができます。これを「専決」と呼び、通常は所定の内部規則に基づいて決定されます。専決の場合、行使される権限は委任ではなく、あくまで元々の機関の名前で行われます。

一方、代決は、専決を行う者が不在のときに、代わりに行う決定のことを指します。これにより、権限の継続性が維持されます。

権限の監督

権限は単に与えられるだけでなく、その行使に対する監督や指揮命令の入り口も含まれています。行政機関は、その権限を行使する際に、法律や他の規則に基づいて適切に監督される必要があります。これにより、公的な透明性と責任が保障されます。

まとめ

権限は、様々な法律において重要な役割を果たしています。行政法や民法の枠組みの中で、権限の委任や代理のメカニズムを理解することは、公的な業務の運営を知る上で欠かせない要素です。各機関の権限の範囲やその行使方法を正しく把握することで、法的な紛争を回避し、公正な行政の実現に寄与できます。

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