横井清

横井清（1935年10月31日 - 2019年4月7日）は、日本中世史を専門とする歴史学者でした。京都市で生まれ、立命館大学文学部を卒業後、同大学院の博士課程を中退。その後、京都市史の編纂補助、花園大学文学部の助教授を経て、富山大学人文学部教授、桃山学院大学文学部教授を歴任しました。

横井の研究は、中世民衆史、特に差別や穢れといった問題に焦点を当てた実証的なものでした。従来の歴史研究が見過ごしがちだった民衆の生活や文化に着目し、彼らの視点から中世社会を描き出すことを試みました。

1989年には、『的と胞衣 中世人の生と死』で毎日出版文化賞を受賞。この著作は、中世の人々の生と死に対する独特な観念を、具体的な事例を通して描き出したものです。他にも、『中世民衆の生活文化』は、中世の民衆がどのような生活を送り、どのような文化を育んでいたのかを詳細に解説したもので、増補版が講談社学術文庫に収録されるなど、長く読み継がれています。

また、『東山文化 その背景と基層』では、東山文化が成立した背景にある社会構造や民衆の文化に光を当て、『看聞御記 「王者」と「衆庶」のはざまにて』では、室町時代の皇族の日記を通して、当時の社会情勢や人々の意識を探求しています。

横井は、学術的な研究活動に加えて、一般読者向けの著作も数多く発表しました。『現代に生きる中世』や『中世を生きた人びと』などでは、中世の歴史を現代社会とのつながりの中で捉え、歴史を身近に感じられるような記述を心がけています。共編著としては、網野善彦との『日本の中世6 都市と職能民の活動』があり、都市の発達と職能民の活動に焦点を当て、中世社会の多様な側面を明らかにしています。

横井清の研究は、中世史研究に新たな視点をもたらし、多くの人々に影響を与えました。その著作は、今もなお読み続けられ、中世史研究の重要な礎となっています。

主な著作

『中世民衆の生活文化』東京大学出版会 1975、講談社学術文庫（増補版・全3巻）2007-2008
『東山文化 その背景と基層』教育社歴史新書 1979、平凡社ライブラリー 1994
『的と胞衣 中世人の生と死』平凡社 1988、平凡社ライブラリー 1998
『下剋上の文化』東京大学出版会 1980
* 『室町時代の一皇族の生涯 『看聞日記』の世界』講談社学術文庫 2002

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