横尾将臣

横尾将臣：遺品整理の先駆者、社会の課題に挑む

横尾将臣（よこお まさとみ、1969年生まれ）は、メモリーズ株式会社の代表取締役を務める、日本の実業家です。彼は単なる経営者としてだけでなく、遺品整理の第一人者として、大学での臨時講師や各種団体での講演活動を通じて、その経験と知識を広く社会に共有しています。毎日放送・TBS共同制作のテレビドラマ『遺品整理人 谷崎藍子』の監修や、NHK『プロフェッショナル 仕事の流儀』への出演を通して、遺品整理の現場のリアルを伝えてきました。

人物と経歴

1969年3月12日、香川県に生まれ大阪で育ちました。幼少の頃はレスキュー隊員を夢見ていた横尾氏は、ラグビー選手、サックス奏者という異色の経歴を持ちます。音楽の才能にも恵まれ、高校時代にはラグビーで大阪選抜に選出。その後、本田技研でラグビー選手として活動した後、上京しKENTO'S GROUPでサックス奏者としてのキャリアをスタートさせました。母親の看病のために大阪に戻り、リゾート会員権販売会社に就職したことが、サラリーマンとしての最初の経験となりました。

「メモリーズ」設立のきっかけ

横尾氏が遺品整理に関心を抱いたのは、33歳の時に経験した祖母の孤独死でした。遺品整理に苦労する母親の姿を見て、遺族の負担を軽減し社会貢献にも繋がるのではないかと考え、遺品整理業の世界へ足を踏み入れます。業界の先駆けである「キーパーズ」でノウハウを学んだ後、2008年に独立し、遺品整理専門会社「メモリーズ」を設立しました。

既存の業者の多くが遺品を単なる不用品として処分することに疑問を感じた横尾氏は、遺品のリサイクルを通じて社会貢献を目指しました。不要な遺品を買収し、その収益を施設や海外ボランティアへの寄付に充当することで、処分費用を削減し、より手頃な価格でサービスを提供することを可能にしました。

メモリーズは、現在では日本全国に1万社以上あると言われる遺品整理業者の中でも、トップクラスの受注件数と成約率を誇ります。近年では、遺品整理だけでなく、生前整理の依頼も増加傾向にあります。

孤独死・セルフネグレクト問題への取り組み

数多くの孤独死の現場を経験する中で、横尾氏は「孤独死は防げたはずの死である」という思いを強く抱くようになりました。セルフネグレクト（自己放任）に陥っている人々が、地域社会から孤立している現状に危機感を覚え、地域包括システムの必要性を訴えています。孤独死を防ぐためには、介護や福祉と連携し、高齢者の住環境を整える「福祉整理」が重要であると提唱しています。

「福祉整理」は、単なる片付けではなく、高齢者や社会から孤立した人々が健全な生活を取り戻すための取り組みです。地域コミュニティーづくりを通じて孤独死を早期発見する「七十二時間プロジェクト」を推進しています。

横尾氏は、「葬儀は肉体的な別れ、遺品整理は精神的な別れ」と語り、死生観を持ち、今を生きること、家族や友人、地域社会との繋がりへの感謝の気持ちを持つことの重要性を説いています。

特殊清掃の現場から

横尾氏はこれまでに1,800件を超える特殊清掃の現場を経験しています。その経験から、体液や脂の洗浄には強アルカリ性の洗剤やオゾン発生器を使用し、徹底的な消臭作業を行っています。また、高齢者向け住宅には、フローリングよりもクッションフロアが適していると述べています。

メディア出演と著書

横尾氏は、テレビ番組への出演や著書を通じて、遺品整理の現場から見える高齢者社会の真実を発信し続けています。著書『遺品整理から見える高齢者社会の真実』では、遺品整理の現場で出会った様々な人々の物語を通じて、現代社会の課題を浮き彫りにしています。

横尾将臣は、遺品整理という仕事を通じて、社会の課題に真摯に向き合い、人々の尊厳を守るために尽力しています。彼の活動は、私たちに「死」と「生」について深く考えさせてくれるでしょう。

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