横山青娥

横山 青娥

横山 青娥（よこやま せいが、1901年（明治34年）12月25日 - 1981年（昭和56年）12月20日）は、日本の詩人、童謡作家、そして国文学者として多岐にわたる活動を展開した人物である。現在の高知県安芸市にあたる安芸郡安芸町に生まれ、早稲田大学文学部で国文学を専攻し、1927年（昭和2年）に卒業した。

詩人としての横山青娥のキャリアは、大正末期に始まる。1921年（大正10年）、彼は当時高名な詩人であった西條八十に師事し、本格的に詩作の道を歩み始めた。彼の作品は、特に海をテーマにしたものが多く、「黄金の灯台」（1923年）、「蒼空に泳ぐ」（1927年）、「海南風」（1942年）といった詩集を発表する中で、その作風から「海洋詩人」として広く認識されるようになった。

詩壇における活動も特筆される。1924年（大正13年）1月には、西條八十の門下生たちと共に詩誌「棕櫚の葉」を創刊し、その運営に携わった。この詩誌は翌年12月には廃刊となったが、その後、海外から帰国した西條八十を中心に1926年（大正15年）5月に創刊された全国詩誌「愛誦」に参加。横山青娥は「愛誦」において1934年（昭和9年）の廃刊まで編集主宰という中心的な役割を担い、当時の日本の詩壇において多くの新しい才能を紹介し、重要なプラットフォームを築き上げた。さらに「愛誦」廃刊後も、1934年（昭和9年）4月からは新たに全国詩誌「昭和詩人」を主宰し続け、終生にわたり詩作と詩壇の発展に貢献した。

また、横山青娥は童謡作家としても活動した。1926年（昭和元年）には童謡詩人会に入会し、子供たちのための詩作にも力を注いだ。当時の主要な童謡雑誌である「乳樹」や「コドモノクニ」などに多くの童謡を発表し、子供たちに親しみやすい言葉で詩の世界を届けた。自身の著作としても、童謡集「栴檀の花」（1931年）や、童謡に関する評論集「日本童謡十講」などを刊行し、童謡という分野の普及と研究にも寄与した。

戦後、横山青娥は故郷の高知県へ一度帰郷したが、1951年（昭和26年）に再び上京し、教育者としての道を歩み始めた。本郷学園の教員を経て、後に昭和女子大学の教授に就任し、長年にわたり国文学の研究と後進の指導に尽力した。大学での研究活動は学術的にも高く評価され、特に日本詩歌の形態に関する研究は顕著であり、1961年（昭和36年）にはその功績により文学博士号を取得した。教育者、研究者としての側面も、詩人・童謡作家としての顔と同様に、彼の生涯を特徴づける重要な要素であった。

主な著作としては以下のものが挙げられる。

詩集
『黄金の灯台』 (1923年)
『蒼空に泳ぐ』 (1927年)
『歳月の花束』 (1930年)
『祖国愛の光輝』 (1932年)
『海南風』 (1942年)

童謡
『栴檀の花』 (1931年)

評論・詩論
『詩人一茶』 (1926年)
『新らしい詩の作り方』 (1931年)
『作詩鑑賞詩法の研究と推敲』 (1936年)
『日本名詩選釈』 (1936年)
『日本童謡十講』 (刊行年不明)

国文学研究
「日本押韻学綱要」 (1937年、論文)
『日本詩歌の形態学的研究』 (1959年)
「和歌日本の系図」 (1969年、論文または著書)

横山青娥は、詩人、童謡作家、国文学者という多才な顔を持ち合わせ、それぞれの分野で確かな足跡を残した。特に詩人としては海洋を詠んだ作品で知られ、詩誌主宰者としても詩壇に貢献。また、学術分野においては日本詩歌の研究で重要な業績を挙げた。その生涯は、日本の近代文学・詩壇の変遷と共にあり、多角的な視点から文学に関わり続けた稀有な存在と言えるだろう。

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