横廠式辰号試作水上偵察機

横廠式辰号試作水上偵察機

横廠式辰号試作水上偵察機（よこしょうしきたつごうしさくすいじょうていさつき）は、大日本帝国海軍によって試作された水上偵察機です。この航空機は1924年に新型の水上偵察機の設計と開発を命じられたことから始まりました。当時の海軍はハンザ式水上偵察機の代替を求めており、中島飛行機や愛知時計電機の航空機部門、そして横須賀海軍工廠（横廠）がその任務に選ばれました。

開発の経緯

その後、横須賀海軍工廠では技師の横田成沽が設計主務者として配属され、1924年から1925年にかけて先進的な全金属製の機体を開発しました。この機体は全金属製の低翼単葉機で、停留所は単フロートという構造になっていました。また、機体形状がハンザ式に似通っている一方で、ドルニエ系の構造を持つことが特徴です。

1925年に完成した試作機は、試験飛行を経たものの、驚くべきことに安定性に問題が見つかりました。これに続いて、全金属製のKB試作飛行艇が1926年3月22日に墜落事故を起こしたことが影響し、全金属製機の実用化が早すぎると判断されてしまいました。その結果、横廠式辰号は不採用となり、実際には中島飛行機の試作機が一五式水上偵察機という名称で制式採用されることとなりました。

仕様について

横廠式辰号試作水上偵察機の主な諸元は以下の通りです：

• - 全長：9.15 m
• - 全幅：15.00 m
• - 全高：3.60 m
• - 自重：1,445 kg
• - 全備重量：2,100 kg
• - エンジン：三菱 の水冷V型8気筒エンジン（最大出力320 hp）× 1
• - 最大速度：172 km/h
• - 武装：7.7mm旋回機銃 × 1
• - 乗員：2名

このように、横廠式辰号試作水上偵察機は、重要な設計や技術革新をもたらす可能性を秘めていたものの、実運用においては安定性の問題から不採用となる結果を招きました。そのため、試作機プロジェクトの成功には至らなかったものの、当時の航空技術の発展に寄与したことは間違いなく、その後の航空機開発に影響を与えることになりました。最終的には他のメーカーが提供した機体が主力として採用されることとなり、横廠式辰号は歴史に残る試作品として位置づけられています。

参考文献

本機の詳細は、野沢正著『日本航空機総集 愛知・空技廠篇』（出版協同社、1959年）に記載されています。

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