横浜ノース・ドック

横浜ノース・ドック：アメリカ軍の重要な港湾施設と、その周辺

横浜ノース・ドックは、横浜市神奈川区の横浜港瑞穂埠頭に位置するアメリカ陸軍とアメリカ海軍の重要な港湾施設です。かつては「ノースピア」とも呼ばれていました。1925年に着工した瑞穂埠頭は、第二次世界大戦後、連合国軍に接収され、1952年の講和条約発効後は在日米軍が使用を続けています。

施設の構成と機能

横浜ノース・ドックは、大きく分けて2つの地区から構成されています。1つは、アメリカ陸軍が管理する埠頭地区で、相模総合補給廠や横田飛行場へのアメリカ軍物資の陸揚げが主な業務です。もう1つは、アメリカ海軍が管理する郵便局地区で、海軍艦船乗組員への軍事郵便の配達を行う「艦隊軍事郵便センター」が設置されています。

敷地面積は約55ヘクタール（瑞穂埠頭の総面積は約79.7ヘクタール）で、7つのバースを有しています。管理部隊は第836輸送大隊で、第35補給・業務大隊司令部（全世界4ヶ所の陸軍事前集積貯蔵拠点の一つ「APS−太平洋」を運用）、軍事海上輸送コマンド極東支部、重舟艇中隊（ラニーミード級汎用揚陸艇を運用）などの部隊が所属しています。第836輸送大隊は、オーストラリアからタイまで広範囲を担当し、日米合同訓練の際には陸上自衛隊資材のアメリカ本土への輸送も担っています。

返還の進捗と将来構想

横浜ノース・ドックの返還は段階的に進められています。2000年にはアメリカ軍に乳製品を供給していた「神奈川ミルクプラント」が返還され、跡地は浦島公園の拡張に利用されました。2009年には瑞穂橋と埠頭外周の港湾道路が、2021年には使用されていなかった鉄道施設などが返還されています。

将来の横浜都心臨海部・インナーハーバーの整備指針である「海都横浜構想2059」では、完全返還後の瑞穂埠頭を水上交通の拠点として活用する計画が示されています。具体的には、みなとみらい地区やポートサイド地区などから瑞穂埠頭へのシーバス運行が構想されており、国際的な雰囲気を持つオフィスやパビリオンなどを整備する構想もあります。

その他の関連情報

陸上自衛隊中央輸送隊が、施設内の建物を事務所や倉庫として共同使用しています。近年は、中国人民解放軍海軍の潜水艦活動活発化を受け、アメリカ海軍の海洋監視艦が横浜ノース・ドックを事実上の母港として使用しています。

かつてはJR貨物東高島駅から専用線が分岐していましたが、2021年の返還で廃止されました。また、横浜市交通局の路線バス（46系統）も、米軍敷地内を通過していたため、利用に制限があり、2013年に廃止されました。

横浜ノース・ドックは、歴史的にも、そして地政学的にも重要な役割を担ってきた施設です。今後の返還と再開発によって、横浜港の新たな魅力が創出されることが期待されます。その動向は、横浜市の発展のみならず、国際情勢にも影響を与える可能性を秘めています。

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