横浜連隊区

横浜連隊区とは

横浜連隊区（よこはまれんたいく）は、大日本帝国陸軍に存在した組織の一つです。主に徴兵や召集といった兵事事務を遂行する役割を担いました。特に、太平洋戦争が進行する中の昭和16年（1941年）に、一府県一連隊区制の推進に伴い、神奈川県全域を管轄区域として再設置されました。その実務は、管轄区域内に設けられた横浜連隊区司令部が担っていました。戦争末期の昭和20年（1945年）には、作戦と軍政の分離が進められる中で、従来の兵事事務に加え、地域防衛体制の構築を任務とする横浜地区司令部が同じ区域に設置され、横浜連隊区司令官がその司令官を兼任する体制となりました。

沿革

横浜連隊区の管轄区域となった神奈川県における陸軍の兵事組織は、連隊区制度が初めて設けられた明治29年（1896年）の時点では、横浜連隊区と麻布連隊区に分割されていました。この初期の横浜連隊区は神奈川県の大半を管轄していましたが、橘樹郡（たちばなぐん）と都筑郡については麻布連隊区の管轄下にありました。

その後、日本陸軍の内地における師団体制を19個師団に増強する方針に対応するため、明治40年（1907年）9月17日に陸軍管区表が改正されました。これにより、同年10月1日をもって、横浜連隊区は甲府連隊区と名称を変更しました。この名称変更に伴う管轄区域の変更はありませんでした。

大正14年（1925年）4月6日には、日本陸軍のいわゆる第三次軍備整理に伴う陸軍管区表の改正が行われました。この改正は同年5月1日に施行され、それまで麻布連隊区に属していた神奈川県内の橘樹郡と都筑郡が甲府連隊区に移管されました。この結果、甲府連隊区は山梨県に加え、神奈川県の全域を管轄する体制となりました。

昭和16年（1941年）には、北海道を除いて原則として各府県に一つずつ連隊区を設置する「一府県一連隊区制」への移行が進められました。その前段階として、同年4月1日、甲府連隊区から神奈川県が分離し、改めて横浜連隊区が復活しました。この新設された横浜連隊区は神奈川県のみを管轄区域とし、司令部は横浜市中区老松町に設置されました。組織としては、東部軍管区に属する東京師管の隷下に置かれました。同年11月1日には、陸軍管区表が正式に改められ、一府県一連隊区制が施行されています。

太平洋戦争末期の昭和20年（1945年）には、作戦指揮系統と軍政系統の分離が推進されました。これに伴い、同年3月24日、横浜連隊区の管轄区域と同じ地域に横浜地区司令部が新設されました。この地区司令部は、連隊区司令部の人員が司令官以下、要員を兼任する形態でした。これにより、連隊区司令部は従来の兵事事務に加えて、地域防衛体制の構築と指揮も任務とするようになりました。同年4月1日には、所属する東京師管が東京師管区と改称されています。

歴代司令官

横浜連隊区司令官を務めた主な人物は以下の通りです。

後藤 十郎 予備役陸軍少将：昭和16年4月1日 - 昭和17年11月18日
平岡 力 大佐：昭和17年11月18日 - 昭和19年5月22日
丸山 定 予備役陸軍少将：昭和19年5月22日 - 昭和20年3月31日

昭和20年3月31日以降、横浜連隊区司令官兼横浜地区司令官を務めた人物は以下の通りです。

鈴木 春松 予備役陸軍中将：昭和20年3月31日 - 終戦

参考文献

* 防衛研修所戦史室『陸軍軍戦備』 朝雲新聞社〈戦史叢書〉、1979年。

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