横田増生

横田増生の軌跡：企業内部に迫るジャーナリスト

横田増生は、1965年に福岡県で生まれた日本のジャーナリストです。彼のジャーナリストとしてのキャリアは、アメリカ合衆国全50州を巡り、現地の人々の声を集めた『アメリカ「対日感情」紀行』から始まりました。この作品でデビューを飾った後、横田氏は大企業への潜入取材という独自のスタイルを確立していきます。

特に注目を集めたのは、ユニクロの内情を暴露した『ユニクロ帝国の光と影』です。この作品では、長時間労働やサービス残業といった過酷な労働環境、さらには同族経営の実態が詳細に描かれました。出版後、その内容は大きな反響を呼び、出版からわずか2ヶ月で3万部以上を売り上げるベストセラーとなりました。

しかし、この本は単なる話題作に留まらず、大きな波紋を呼び起こします。ファーストリテイリングと子会社のユニクロが、横田氏と出版元の文藝春秋を名誉毀損で訴えたのです。結果として裁判はユニクロ側の全面敗訴に終わりましたが、この裁判を通じて、横田氏のジャーナリストとしての姿勢と、その作品の信憑性が改めて世間に知られることとなりました。

裁判後、ユニクロの社長である柳井正氏から「実際にユニクロで働いてみてくれ」という旨の発言を受け、横田氏は2015年10月から約1年間、ユニクロに潜入取材を行いました。この潜入取材の間、横田氏は妻の家に婿入りしたため、一時的に「横田増生」をペンネームとして使用していましたが、アメリカでの取材許可を得るために本名に戻しました。

横田氏の取材対象は、ユニクロに留まりません。アマゾンについても、その内部構造や労働環境に鋭く切り込んだ『潜入ルポamazon帝国』は、2020年に第19回新潮ドキュメント賞を受賞しました。また、2022年には、『「トランプ信者」潜入一年 私の目の前で民主主義が死んだ』で、第9回山本美香記念国際ジャーナリスト賞を受賞しています。

これらの受賞歴からもわかるように、横田増生の作品は、単なる企業の内情暴露に留まらず、現代社会の構造や問題点を深く掘り下げ、読者に新たな視点を提供しています。

横田増生の主な著作

『アメリカ「対日感情」紀行』（情報センター出版局・2003）
『アマゾン・ドット・コムの光と影』（情報センター出版局・2005）
『潜入ルポ アマゾン・ドット・コム』（朝日文庫・2010）
『フランスの子育てが、日本よりも10倍楽な理由』（洋泉社・2009）
『ユニクロ帝国の光と影』（文藝春秋・2011）
『評伝 ナンシー関―心に一人のナンシーを』（朝日新聞出版・2012）
『中学受験』（岩波新書・2013）
『仁義なき宅配 ヤマトVS佐川VS日本郵便VSアマゾン』（小学館・2015）
『ユニクロ潜入一年』（文藝春秋・2017）
『潜入ルポ amazon帝国』（小学館・2019）
* 『「トランプ信者」潜入一年: 私の目の前で民主主義が死んだ』（小学館・2022）

これらの著作は、企業内部のリアルな実態を伝え、社会的な議論を喚起する上で大きな役割を果たしています。横田増生は、これからもジャーナリストとして、社会の様々な側面に光を当て続けるでしょう。

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