樹村みのり

樹村みのりは、1949年11月11日生まれの日本の漫画家です。埼玉県出身で、1964年、中学3年生の時に『ピクニック』でデビューしました。学生時代から漫画家として活動し、『COM』や『りぼんコミック』などで作品を発表しました。

彼女の作品は、アウシュビッツ、ベトナム、リオデジャネイロの貧民街といった社会問題を取り扱ったり、普通の少女の日常や病気をテーマにしたりと、多岐にわたります。登場人物たちの心の襞を繊細に描く作風は、多くの読者を魅了しました。特に、少女の内面を深く掘り下げた作品は、1970年代の少女漫画に大きな影響を与え、彼女は「24年組」の一人として数えられています。

大学卒業後、一時的に執筆活動を中断しましたが、1974年に『別冊少女コミック』で復帰。小学生時代を舞台に全共闘運動を暗喩的に描いた「贈り物」は、新たな作風の開拓となりました。その後、「菜の花畑のこちら側」では、少女と女子大生の交流を温かく描き、講談社、秋田書店などの少女誌や青年誌、レディース誌で幅広く活躍しました。

近年は寡作となっていますが、過去の作品が宙出版の雑誌で再録されたり、ヘルスワーク協会から作品集が出版されたりと、その作品の価値は再評価されています。2008年には朝日新聞出版の『夢幻館』で読み切り連載を掲載しました。また、秋本治、夢枕獏、みなもと太郎など、多くの男性作家からリスペクトされています。

樹村みのりの代表的な作品には、『ポケットの中の季節』、『雨』、『病気の日』、『ピクニック』、『ローズバッド・ロージー』、『カッコーの娘たち』、『菜の花畑のむこうとこちら』、『悪い子』、『海辺のカイン』、『Flight（フライト）』、『あざみの花』、『星に住む人びと』、『ジョーン・Bの夏』、『歪んだ鏡』、『ふたりが出会えば』、『土井たか子グラフィティ』、『母親の娘たち』などがあります。

これらの作品は、彼女の幅広いテーマ性と繊細な心理描写が特徴で、時代を超えて多くの読者に愛され続けています。少女漫画の枠にとどまらず、社会問題や人間の心の奥深くまでを表現する作風は、他の漫画家にも大きな影響を与え、漫画史において重要な存在です。

樹村みのりの作品は、その時代の社会状況や人々の心の動きを映し出し、読者に深く考えさせる力を持っています。彼女の作品を通して、過去と現在を見つめ、未来への希望を見出すことができるでしょう。

2022年には、明治大学「米沢嘉博記念図書館」現代マンガ図書館にて「樹村みのり展─その優しさ、芯の強さ」が開催され、彼女の漫画家としての足跡を振り返り、その魅力が改めて多くの人々に伝えられました。

アシスタントには、酒井美羽、佐々木淳子、笹生那実、夢野一子らがいました。

彼女の作品は、単行本として多数出版されています。また、『冬の蕾－ベアテ・シロタと女性の権利』は岩波現代文庫にも収録され、幅広い読者に読まれています。

樹村みのりの漫画は、少女漫画の枠を超え、人間の普遍的な感情や社会の課題を深く掘り下げています。その作品は、読者に感動と気づきを与え、長く心に残るでしょう。

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