樺崎バイパス

国道293号樺崎バイパス：越床峠を貫く生命線

栃木県佐野市赤見町から足利市樺崎町に至る国道293号樺崎バイパスは、かつては急カーブと狭隘路が難所であった越床峠の旧道を迂回し、地域住民の生活道路としての役割を担っています。このバイパスの建設は、交通渋滞の緩和と安全性の向上という喫緊の課題への対策として、大きな意義を持っています。

計画と建設

旧国道293号は、越床峠という険しい山道を経由していました。この区間は、狭隘で曲がりくねった道路のため、交通事故の危険性が高く、慢性的な渋滞も発生していました。交通量の増加に伴い、この状況は益々悪化の一途を辿っていました。そのため、安全で快適な交通を実現するため、峠を短絡するバイパスの建設が計画されました。その中心となるのが、越床トンネルです。

1989年に事業が開始され、1992年には越床トンネルの建設工事が着工。新オーストリアトンネル工法という高度な技術を用いて、難工事の末、1995年にトンネルが完成しました。その後、バイパス道路全体の整備が進み、1996年には全線が開通しました。総事業費は約43億円に上り、地域の交通インフラ整備に大きく貢献しました。旧道は現在通行止めとなっており、事実上廃道となっています。

越床トンネル：バイパスの中核

樺崎バイパスの中核を担うのが、延長562メートル、幅員12.5メートルの越床トンネルです。このトンネルは、足利市と佐野市北部を結ぶ重要な交通路となっており、バイパスの円滑な交通の流れに大きく貢献しています。新オーストリアトンネル工法は、地山を安定させながら掘削を進める工法で、安全かつ効率的なトンネル建設に適しています。この工法の採用により、地質条件の厳しい越床峠においても安全にトンネルを完成させることができました。

バイパスの概要

交通量の増加と地域への貢献

樺崎バイパスの開通により、越床峠の交通渋滞は解消され、交通事故も減少しました。通行時間の大幅な短縮は、地域住民の生活の利便性を高め、物流の効率化にも繋がっています。また、観光客の増加にも寄与し、地域の経済活性化にも貢献しています。このバイパスは、単なる道路ではなく、地域社会を支える重要なインフラとして、その役割を果たしています。

参考文献

『栃木県土木史：土木行政50年のあゆみ』、37頁。

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