新オーストリアトンネル工法とは？意味をやさしく解説

新オーストリア トンネル工法 (NATM)

新オーストリアトンネル工法（NATM）は、主に山岳地帯でのトンネル建設に用いられる革新的な工法です。この手法は、掘削後すぐにコンクリートを吹き付け、迅速に硬化させることでトンネルを支えるというアプローチを採ります。具体的には、岩盤にロックボルトを打ち込むことで、地層そのものの強度を利用してトンネルを安定させる理論に基づいています。

歴史的背景

NATMは、1960年代にオーストリアの技術者たちによって提唱されました。特に、ラディスラウス・フォン・ラブセビッツ、レオポルド・ミュラー、フランツ・パッヒャーの三人が信念を持って開発した工法であり、以来、特に長大な山岳トンネルが建設される際に広く利用されています。日本でも、熊谷組により1970年代から施工が始まり、当初は硬い岩盤を対象としていましたが、現在では都市部や軟弱地盤でも適用できるように進化しています。

工法の概要

NATMの特徴として、従来の支保工に比べ、地圧を利用して周囲の地層を一体化する点が挙げられます。従来方式では、掘削した壁面に支保工を設置し、その隙間に木や鉄の板を挟むことで支持をしていました。しかし、強い地圧に対してはこの手法が限界を迎え、落盤事故を完全に防ぐことは困難でした。NATMはその課題を克服し、掘削した断面だけでなく、掘削面の両方の安定性を高めるために設計されています。

工法の流れ

1. 掘削: ダイナマイトや機械を使用して土砂を掘削し、外部に排出します。必要に応じて支保工を設置します。
2. コンクリート吹付け: 掘削した壁面に速やかにコンクリートを吹き付け、壁面を固めます。
3. ロックボルト打設: コンクリートから地山内部へ向け、トンネル中心部から放射状にロックボルトを打ち込みます。これにより、トンネルと地山の一体化を図ります。
4. 覆工コンクリート: 最後にトンネル壁面を覆工コンクリートで仕上げます。

長所と短所

NATMの最大の利点は、機械化が進んでおり、少人数でも施工が可能な点です。また、様々な関連工法との組み合わせが可能で、さまざまな地質に対応できる汎用性があります。さらに、大規模なトンネル建設にも適応しやすいのは大きな利点です。一方で、専用機器が必要となるため、設備投資が大きくなることがあります。また、吹き付けコンクリートが剥がれやすい特定の地質では、従来工法の方がより効果的であることもあります。

近年の適用例

NATMは山岳部だけでなく、都市部でも多くのプロジェクトで活用されています。日本国内の鉄道トンネル、例えば北越急行ほくほく線や上越新幹線の中山トンネルなど、様々な難工事で成功を収めています。また、道路トンネルでも阪神高速神戸山手線や首都高速中央環状線など、数多くの事例があります。