樺崎寺

樺崎寺跡の概要

樺崎寺（かばさきじ）は、栃木県足利市樺崎町に位置していた歴史ある寺院で、足利氏との関連が強いことから多くの文化財が残っています。この寺院跡は2001年に国の史跡に指定され、現在でも訪れる人々に歴史の深さを伝えています。

歴史的背景

樺崎寺は、鎌倉時代の初期に、源姓足利氏の第二代当主である足利義兼によって創建されました。文治5年（1189年）に義兼が奥州合戦の勝利を祈願し、土地を寄進したとされ、その時に開山されたのは伊豆の走湯山からの理真朗安という僧です。義兼は1195年に出家し、1199年に没しました。彼の死後、樺崎寺には義兼の廟所が設けられ、それは赤御堂と呼ばれています。このように、樺崎寺は足利氏の菩提寺として長い間重要な役割を果たしていました。

ところが、戦国時代に足利氏が衰退すると、樺崎寺も荒廃してしまいます。江戸時代には足利氏の末裔である喜連川氏により、その跡地に八幡宮などが再建されましたが、明治時代に入り神仏分離令が施行された際、樺崎寺自体は廃止され、現在残っているのは八幡宮のみです。

寺域の現状

現在、樺崎寺の旧境内の一部には樺崎八幡宮が存在しています。この地域は1984年から発掘調査が行われており、当時の伽藍の配置や構造が少しずつ明らかになっています。寺院は西の八幡山を背にし、正面を東に向けて建てられていました。廟所や多宝塔の他に、大日如来を祀る下御堂、あるいは法界寺と呼ばれた堂宇があり、壮麗な庭園が形成されていました。

文化財の紹介

樺崎寺に伝わる重要な文化財として、2体の像が挙げられます。いずれも日本彫刻史研究者の山本勉によって調査・紹介されており、運慶の作と推測されています。

1. 厨子入木造大日如来坐像: この像は足利市内の光得寺に所蔵されており、重要文化財に指定されています。明治の神仏分離で八幡宮から移されたもので、室町時代の「鑁阿寺樺崎縁起并仏事次第」に記される内容に一致しています。像は、金剛界曼荼羅成身会の三十七尊を表現しており、厨子も当初のものが残っています。

2. 木造大日如来坐像: この像は東京の真如苑真澄寺に所蔵され、やはり重要文化財に指定されています。設置されていた堂宇についての記録が残っており、厨子には1193年の年紀があったと考えられています。

まとめ

樺崎寺跡は、足利氏との関わりや豊かな歴史、さらには貴重な文化財に恵まれた場所です。これらの歴史的要素は、現在も研究や文化的な活動の基盤を形成し、訪れる人々に深い教養と感慨を与える場所となっています。樺崎寺の記憶とその遺構は、地域の文化的アイデンティティを形成する大切な要素であり、未来に向けても大切に保存されねばなりません。

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