橋本公亘

橋本公亘の生涯と業績

橋本公亘（はしもときみのぶ）は1919年7月9日、東京で誕生しました。彼は法学者として傑出した業績を残し、内務官僚としても活躍しました。中央大学法学部の教授を1990年まで務め、法学部長なども歴任しました。また、1992年には日本学士院の会員に任命され、1993年には勲二等瑞宝章を受章しました。彼は1998年、78歳で永遠の眠りにつき、叙正五位を受けました。

学問への情熱と留学

橋本は東京府立第一商業学校を卒業後、1942年に中央大学法学部を卒業し、内務省に入省しました。しかし、若干の時を経て彼は海軍に召集され、主計中尉としてベトナムで終戦を迎えました。帰国後、中央大学で研究者としての道を選び、アメリカのハーバード大学や西ドイツのハイデルベルク大学への留学を通じて、国際的な視野を身につけました。

留学中の1956年、ハンガリー動乱が起こると、橋本はその動きを注視し、国際放送を聴く中で圧倒的な興味を抱いていました。彼の研究に対する姿勢は、一貫して前向きかつ批判的であり、時には社会の不正に対する強い抗議の意志も示されました。

憲法研究者としての足跡

橋本は憲法学者として名を馳せ、特に憲法第9条についての研究は注目されました。彼は憲法の変遷を考慮に入れ、自衛隊を合憲とする立場に至ったことで、社会からの賛否が入り混じる評価を受けました。橋本の主張は、憲法は常に社会の実情をも反映すべきであり、現在の国際情勢を考慮する必要があるとした点に特徴があります。

彼は特に、憲法31条の「法の正当な手続き」を重視し、行政手続法の原案を1964年に提出しました。この法案は、1993年の行政手続法成立の基礎となり、彼の研究が日本の行政法に与えた影響は大きいと言えます。

学界での影響と人間関係

橋本は、多くの憲法学者たちと交流し、特に東京大学の芦部信喜や慶應義塾大学の田口精一、明治大学の和田英夫とは親しい関係にありました。彼の学風は、条文の精緻な分析と判例研究に根ざしており、政治論や立法論に偏ることなく、学問の中立性を重んじました。

また、橋本は学生指導においても中庸を重んじ、極端な意見を避けることが重要であると教えました。彼の教えは、学生たちに学問におけるバランスを保ち、深く考察する精神を育てるものでした。

趣味と私生活

橋本は囲碁を趣味として楽しみ、家庭では妻と二人の息子を育て上げました。二人の息子はそれぞれ異なる分野で活躍し、一人は弁護士として、もう一人はチェースマンハッタン銀行での勤務を経て成功を収めています。橋本自身が有名になる過程や、学問に対する姿勢、家族との関係は、彼の人格形成に重要な要素となっていたことが伺えます。

橋本公亘の生涯は、法学研究に多大な貢献を残しつつ、時代の変化に対しても柔軟に応じ続けたものでした。彼の業績は、日本の法学界において今後も語り継がれていくことでしょう。

もう一度検索