橋本和美

橋本和美（はしもと かずよし）氏は、1978年12月21日に生まれ、日本のオートレース選手として活躍しました。埼玉県出身で、1999年（平成11年）4月1日に選手登録。オートレースにおける26期生にあたり、川口オートレース場に所属していました。競走車には「TFパワーボム」という呼名を用いていました。

選手としては、川口オートレース場に所属する26期生の中でも、若手ながら中堅のポジションを確立していました。特に、同期の中で最も早く優勝を経験するなど、その将来を嘱望される存在でした。通算成績としては、選手生活の中で3度の優勝を果たし、126勝を挙げています。また、2着が102回、3着が107回、着外が534回という記録を残しています。2006年度の後期には、適用ランクA級第19位と評価されていました。

2006年7月には、地元川口オートレース場で開催されたGI第30回キューポラ杯争奪戦において、見事決勝戦への進出を果たしました。決勝では惜しくも3着に終わりましたが、レース後のコメントなどからは、彼の誠実な人柄や競技に対する真摯な姿勢が強く感じられました。

競技への取り組みだけでなく、ファンサービスにも非常に熱心でした。地元川口で毎年夏に開催される「たたら祭り」においては、イベントやチャリティーオークションに積極的に参加し、ファンとの交流を深めました。また、フットサル大会に参加するなど、様々な活動を通じてファンに親しまれていました。その温厚で人懐っこい性格から、先輩選手からは可愛がられ、後輩選手からは頼れる兄貴分として慕われる存在でした。

しかし、その選手生活は突然の悲劇によって幕を閉じます。2006年10月13日、平成18年度埼玉県営第2回第2節の初日、朝のスタート練習中の出来事でした。自身のバイクの後輪が空転し、激しく車体がぶれて落車。さらに、約10メートル後方からスタートしていた後続の阿部剛士選手（27期、川口所属）と衝突するという事故に見舞われました。直ちに緊急措置が施され、意識不明のまま川口市立医療センターへ搬送されましたが、治療の甲斐なく同日12時25分、頸椎損傷のため27歳という若さで息を引き取りました。公営競技における殉職と認定されました。

この悲劇は、オートレースのエンジンがセアに切り替わった1993年以降、4人目の殉職事故となりました。それ以前には、藤川順二選手（1999年3月23日、飯塚）、中村政信選手（1999年12月23日、飯塚）、入江輝義選手（2002年2月3日、川口）が殉職しています。また、事故が発生した川口オートレース場は、2006年8月から9月にかけて走路改修が完了したばかりでした。改修後の走路はタイヤのグリップ力が増し、レース速度が向上していた時期であり、過去に入江輝義選手が同様に改修直後の新走路で事故に遭っていることから、走路改修と安全性に関する議論が再び持ち上がりました。さらに、この年は同年6月に敷地吉男選手が亡くなっており、現役選手の死が続いた時期でもありました。

選手としてのキャリアにおいて、特別に華々しい功績を多数残したわけではありませんでしたが、彼の突然の死がオートレース界全体に与えた衝撃と影響は計り知れないものがありました。かつてダート走路の時代には、多くの選手が命を落としたり、重度の後遺症を負って選手生命を絶たれるなど、その危険性は高く、オートレース界は他の競技以上に「安全」の確保に力を入れてきました。それにもかかわらず発生した橋本選手の殉職事故は、現在のセアエンジンによる高速化されたレースと、走路改修のあり方における潜在的な問題点を浮き彫りにする結果となり、安全対策の再評価を促す契機となりました。

事故の翌日である10月14日には、朝練習前に走路内の事故現場において、選手全員参加による神道形式のお祓いと追悼式が厳かに執り行われました。その後、11月6日には川口オートレース場にて合同葬が営まれ、関係者や選手400名以上が参列し、多くの一般ファンも150名が故人を悼みました。その短い生涯は多くの人々に惜しまれました。

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