機動戦士ガンダムの登場人物 民間人

機動戦士ガンダムの登場人物 民間人

テレビアニメおよび劇場アニメ『機動戦士ガンダム』には、地球連邦軍とジオン公国軍のどちらの陣営にも属さない様々な民間人が登場します。彼らは戦火に巻き込まれながらもそれぞれの人生を送り、物語の主要キャラクターたちに影響を与えました。ここでは、作中に描かれた主な民間人について記述します。

主な民間人

イセリナ・エッシェンバッハ

ジオン軍が占領した北米ニューヤーク市の元市長、エッシェンバッハの娘です。ジオン軍司令官ガルマ・ザビとは深く愛し合う関係でしたが、反ジオンの考えを持つ父に強く反対されていました。ガルマはイセリナとの結婚のためならジオンを捨てることも厭わないほど彼女に心惹かれていました。ホワイトベースを追撃するガルマの身を案じたイセリナは、危険を顧みず面会を試みますが、父や使用人に阻まれ断念します。ガルマは最期に彼女を思い浮かべながら戦死。その報に接したイセリナは深く悲嘆に暮れます。

その後、イセリナはガルマの部下ダロタを説得し、仇討ちのためにガウ攻撃空母3隻で出撃します。仲間を失いながらも、負傷したダロタに代わって自らガウを操縦し、ガンダムへの特攻を敢行。これによりガンダムを操縦不能に追い込みますが、自身も特攻時の衝撃で致命傷を負っていました。ガンダムを修理するため機外に出たアムロに銃口を向けますが、力尽きてガウから転落死します。アムロを「仇」と呼んだ彼女の言葉は、アムロの心に深い傷を残しました。彼女の遺体は、アムロたちホワイトベースのクルーによって名も知らぬ女性として砂漠に埋葬されました。

劇場版『機動戦士ガンダム』では、イセリナが登場するエピソードはカットされています。漫画『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』では、父と共に反ジオン抵抗運動を陰で支援し、ガルマに情報を提供する役割も担っていたとされています。ガンプラブーム時には、メインキャラクターと並んで商品化されるほどの人気がありました。

エッシェンバッハ

ニューヤーク市の前市長で、イセリナの父。財界の意向もあり、ジオン軍の占領に協力する姿勢を見せますが、反ジオンの立場で、ガルマとイセリナの結婚には頑として反対しました。シャアからも「頑固そう」と評されています。妻はすでに亡くなっているとされます。

『THE ORIGIN』では、ヨーゼフ・エッシェンバッハというフルネームが設定され、ロサンゼルス市長兼元北米合衆国大統領候補。反ジオンゲリラを支援しており、ガルマ戦死後、その動きを察知していたジオン憲兵に逮捕・拘束を宣告されます。抵抗しようとしたため、その場で処刑されました。

カマリア・レイ

主人公アムロ・レイの母親。宇宙での生活に馴染めず、幼いアムロを夫テム・レイに託し、地球で一人暮らしていました。テレビ版での登場はわずかですが、劇場版では「カマリア」という名が設定されました。

一年戦争中は避難民キャンプで救護活動に従事しており、そこでアムロと再会します。しかし、偵察に来たジオン兵に発砲し負傷させたアムロの姿に驚き、昔の優しい息子に戻ってほしいと諭します。その言葉に反発するアムロを見て絶望し、男手で育てたことが原因ではないかと夫テムを内心責める言葉を漏らしました。アムロは、過酷な現実を生きる自分を理解できない母との断絶を感じ、ホワイトベースのクルーとして敬礼し、別れを告げます。その後の消息は不明です。小説版にはアムロ幼少期からの描写があります。

カムラン・ブルーム

中立コロニー、サイド6の検察官で、ミライ・ヤシマの許婚。眼鏡をかけたインテリ風の青年です。戦争で行方不明となっていたミライの捜索に熱心でした。親が決めた婚約であったため、ミライはこの関係に乗り気ではなく、事あるごとに父親の力を頼り、戦争を他人事のように考えるカムランに性格的なずれを感じていました。サイド6政庁の意向に反し、カムランはホワイトベースの修理のためペルガミノの浮きドックを斡旋しますが、ドックはコンスコン隊の襲撃で破壊されてしまいます。

出航するホワイトベースに対し、カムランはジオン軍の待ち伏せを承知で自家用機での水先案内を申し出ます。ミライにはスタンドプレーと映りましたが、ブライトは彼の提案を受け入れます。スレッガーに窘められたミライもこれを後押しし、水先案内は実行されました。

映画『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』では、成長した姿で登場。地球連邦政府会計監査局の代表としてネオ・ジオンとの交渉に立ち会いますが、その裏でブライト・ノアに極秘裏に核弾頭を託します。その行為は終身刑に相当する可能性がありましたが、動機を「ミライに生きていてほしいから」と語りました。

ホワイトベースの子供たち（カツ・ハウィン、キッカ・キタモト、レツ・コ・ファン）

サイド7の戦災孤児で、ホワイトベースに乗船した民間人の子供たちです。カツ、キッカ、レツの3人はトリオとして、殺伐としがちな艦内に明るさをもたらしました。ジャブローでは、潜入したジオン工作員が仕掛けた時限爆弾を自力で発見し、解除・運び出しを行うという活躍を見せました。最終決戦であるア・バオア・クーからの脱出時には、アムロのコア・ファイターをテレパシーで誘導し、高いニュータイプ能力の片鱗を見せています。子供ながらにホワイトベースのクルーとして激動の一年戦争を生き抜きました。

一年戦争終結後、ホワイトベース元クルーのハヤト・コバヤシとフラウ・ボゥが結婚し、彼らを養子として引き取られました。後の『機動戦士Ζガンダム』にも成長した姿で登場し、フラウに随伴しています。

ミハル・ラトキエ

ベルファストに住む少女。幼い弟ジルと妹ミリーを養うため、物売りの傍らジオン軍のスパイ活動を行っていました。連邦兵に変装してホワイトベースに潜入し、カイ・シデンと偶然再会。カイとアムロの会話からホワイトベースの進路情報をジオン軍へ伝えます。しかし、艦内で弟妹くらいの子供たち（カツ、レツ、キッカ）の無邪気な姿を目にし、自らの行為を後悔します。

その後、罪滅ぼしとしてカイと共にガンペリーに乗り込み戦闘に参加。ミサイル発射装置が故障した際、手動で発射させるため危険を顧みずコンテナへ降り、ミサイルを発射させズゴックを撃破しますが、その際の爆風に煽られ機体から投げ出されて死亡しました。ミハルの死は、カイに戦争の意味を深く考えさせ、悲劇を繰り返さない決意を抱かせました。

その他の民間人としては、ククルス・ドアンが面倒を見ていた戦争孤児たち（クム、タチ、チヨ）、アムロの幼馴染コミリーとその母、ホワイトベースの避難民だったペロとその祖父スミス、セント・アンジェでホワイトベースを下船したペルシア親子などが描かれています。また、サイド6の有力者ペルガミノやランク・キプロードンなども、中立という立場から戦争に関わる民間人として登場しています。

これらの民間人たちは、それぞれが戦争の犠牲者であったり、生き抜くために過酷な選択を迫られたりしながら、物語にリアリティと深みを与えています。彼らの存在は、軍人たちだけでなく、多くの一般市民が戦禍に巻き込まれ、影響を受けた一年戦争の側面を描き出しています。

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